柊

キラーズ・オブ・ザ・フラワームーンの柊のレビュー・感想・評価

3.9
予備知識無しで観てしまったので,一回では追いつかない。でもこの長さ2度観る勇気と時間がない。

石油といえば中東のイメージがあるが,原油の産出国の第一位ってアメリカなのだよね。
やっぱり資源が自前で調達できる国の強気ってここなんだなって別の意味で納得してしまった。

そして先住民が掘り当てた石油を言葉巧みに支配しようとする狡猾なデニーロ。善人のフリをした極悪役がこんなに様になる俳優はそうそういない。しばらく名を聞かなかったけど健在ですね。そんな狡猾な叔父に支配される頭が少し弱いディカプリオ。始終眉間に深く刻まれた皺と口がへの字になっていて、本当に愚鈍にみえる。やっぱり上手いなぁ。この2人以外で役名と俳優名が一致する人はいなかったけど,故に妙な臨場感があり、真実味が増す。

アメリカ先住民の差別問題って今も根強く残っていながら全く無視されているけど,この時代などはもうほんと犬より軽く見られていたのがよくわかる。いとも簡単に杜撰な方法で,バンバン人が死ぬ。この原因も犯人も誰も暴こうとしない。鼻から先住民の死などどうでもいいと言う風潮が長く続いているようだ。白人の富に群がり奪い取ろうとする浅ましさ。きっと今もほとんど変わってない。強いものだけが生き残るアメリカの本質を見せつけられたようで…

そして最後,犯罪さえもショーにしてしまう国民性をみて心底この国の歴史の価値観と精神の価値観がさほど変わっていない事に薄ら寂しい気持ちになる。高齢のスコセッシがこの映画で伝えたいことは果たして,アメリカ人には伝わるのか?先住民の無念は伝わるのか?
柊