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キラーズ・オブ・ザ・フラワームーンのFAZのレビュー・感想・評価

4.0
いくら映画好きでも、3時間半の長さはちょっと見る前に気合いを入れないと腰が重くなる。
でも見終わった後「え、3時間半もあった?」と思ったのが正直な感想。それぐらい、中弛みせず最後まで物語に集中させてくれる、力のこもった構成と演技と脚本だった。

映画って、その場での娯楽的な楽しさももちろんあるけど、作品を生み出すことで、この史実に基づいた話を、後世に残していけるという意味を持つんだよなと、映画を作る意味というのを改めて考えてしまった。
現に私は、この作品を見たことで、アメリカが私利私欲のために、原住民であるアメリカンインディアンを迫害した歴史の一部を知ることができた。

人間はここまで欲望のために非道になれるのかと恐ろしくなったが、きっと表面化されていないだけで、このような出来事は多くあったんだろう。

思い返せば、人類の歴史はいつだって自分の欲望のために動いた一部の人間が、弱者を排除し虐げた歴史でもある。
今のイスラエルとパレスチナの争いもそうだし、ロシアとウクライナの争いもそうだ。

でもひとりの悪巧みに賛同者がいなければ、それは間違ってるよと言える人が多ければ、世界は変わっていたんだと思う。

ディカプリオ演じるアーネストが、本当にクズ。
ひたすら自分の意見を持たずに、叔父にいいように使われて、言ってることとやってることに一貫性がまるで無い。
ディカプリオは最初、この事件を解決する英雄的な立ち位置の警察官の役だったのを、自らこのクズ男を演じることを選択したとのこと。それだけ、この物語を真実に近い形で語ることに重きを置いていることがわかる。

アメリカの忘れさられた黒歴史を世に出すことへの思いを強く感じる映画だった。多くの人に見て欲しい。
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