れおん

キラーズ・オブ・ザ・フラワームーンのれおんのレビュー・感想・評価

4.0
1920年代、アメリカ南部オクラホマ州の地下で発見された、底知れぬ量のブラック・ゴールド。当時、石油鉱業権を有していたオセージ族は、この世で最も裕福で美しく、聡明な一族として、アメリカ全土に名を馳せることとなった。「両家が結ばれれば、資産が直接我々の元に流れる」一族の富に目をつけた"悪魔"による『オセージ族連続怪死事件』の真相が明らかとなる。

言わずと知れた名監督、マーティン・スコセッシがまた一作、映画界の大義のために「歴史」を掘り起こし、現代の我々に「映画」としてその真相を届ける。『アイリッシュマン』以来の監督、第二次世界大戦後のアメリカ裏社会を生きた無法者から、時代を遡り、虐げられた部族が富を得て、邪悪な"コヨーテ"に喰われるまでの物語を取り上げる。

毎度お馴染みのロバート・デ・ニーロにレオナルド・ディカプリオと、豪華俳優陣に、脚本は『フォレスト・ガンプ』『アリー スター誕生』のエリック・ロス。申し分のない製作陣とともに、描きたいことをすべて描き切って、206分。スコセッシ監督でなければ許容され得ない"長さ"だが、さすが、無駄な映像がない。というより、ショット一つひとつに対するこだわりが凄い。音楽も自然。退屈させることのないストーリーテリングと目を見張る映像美とで、丁寧にその主題と向き合っている。

正直、嫌いでもないし、好きでもない。素晴らしい「映画」体験をしたというより、何か教誡を得たような感覚。溢れ出る強欲の精神が愛や絆を蝕み、自己が崩壊したときには、自己防衛に奔る男たち。悪魔よりも憎く、虚しい存在。
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