残像

あなたの顔の残像のレビュー・感想・評価

あなたの顔(2018年製作の映画)
3.0
「顔(あるいは首より上)」で95%以上の画面が構成される。最初のひとりは5分以上「顔」が映し出されたまま何も喋らない、目を見開いたり俯いたり、微妙な動きはあるものの、そこに表情というような明確なものは現れてこない。

その顔を見ていて、ああ顔をずっと見ていてもゲシュタルト崩壊は起きないんだな、と変なところに感心していた。顔には表情というカテゴリーが記号的に与えられることもあるけれど、顔は顔であってもともと意味などないのだ、なんてことをぼんやり思った。

インタビューの内容(物語)より、それが「顔」という造作物の変容にどのような影響を及ぼすかが楽しい。すぐ表情から感情を読みとったり、なにかと「情」をくみとろうとしがちだけれど、この映画は感情よりも、実感とか感触を感じる映画なんじゃないかなと。

あとロビーに貼ってある雑誌の切り抜きのどこかで「ツァイ・ミンリャンは映画館をアートスペースに変えてしまう」ってだれかが言ってたけど、見始めた時はたしかに美術館で見る映像のようだなって思った。でもやはりこの作品は、見てる最中から強烈に「時間」という概念を意識させられるという点においてこれはやはり「映画」でしかないのだなと感じたのでした。
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