こめ

お嬢ちゃんのこめのレビュー・感想・評価

お嬢ちゃん(2018年製作の映画)
3.5
自分の加害性について考えて、映画の世界と並行して自分の過去を反芻する居心地の悪い映画だった。どの人物も戯画化されてコントの中のようなキャラクターをしているが、そのキャラクターが次の場面ではポツンと1人、生々しく映っている。その落差は見ている方を緊張させる。次の瞬間何をするか分からない、何を考えているか分からない存在になる。
 
 男を有害で軽薄な存在として容赦無く描いているようで、逆にそのカリカチュアが現実の男性の加害性の生々しさを漂白しているようにも感じる。劇中のような男性でなく、自分と同じような価値観を持っているような人間の中にも加害性はある、という視座なしに、下らない人間のくだらなさを映すことに留まっているので、安全な場所からそれを眺めているような気持ちのまま終わってしまう。

 いろんな言葉が飛び交ったけれど、誰も本当に言いたいことに到達してないような感じが残る。セクハラみたいな言葉も親戚との言い合いも友達との衝突も日常的な言葉の延長線上にあって、どれも結局、澱として溜まるに過ぎないやりとりに感じた。
 
 撮っている側が、誰のことにもどの言葉にも肩入れしないドライさは好きだけど、人物がカリカチュアされている分、劇的なものを期待させられる。でもそういう映画ではなかった。だし、女体をエロティックに見えるよう撮ってるから、何だかんだ男性が女性を性的に消費する眼差しを相対化しないまま、男性の加害性を扱った映画をとってるんじゃないかと勘繰ってしまう。

 とはいえ見ながら自分の加害性についても考えたから成功しているのかも知れないし、映画はテーマを描くためにあるわけでもない。映画として良い画と良い時間が流れていた。ただ少し、中途半端な感じが残る。
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