生足

お嬢ちゃんの生足のレビュー・感想・評価

お嬢ちゃん(2018年製作の映画)
4.3
リアルの中に一線を越えた何かが切り込む際に迸る緊張感と興奮。
「これ飲んだら部屋行くから」という前振りの後のリビングへの移動、絶対に話題を渡さないみのり、「美人に厳しく、ブスに優しく生きていこうと思う」からの実演など。

そのトリガーとなる主人公の設定が見事。集団、社会生活の中での異物でありながらも真っ当。集団での会話の中に切り込んでくる、規範を越えた個人の意思という異物。

集団での会話、生活の描き方が本当にありがたい。それぞれ異なる感情や状態、思想の個人が、規範とされる表層の部分を共同で支えながら、独り言を言っている感じ。そこに愛がある場合を除いて、全員が規範の下に自分のことしか考えておらず、その中で偶然意見や感情が一致して盛り上がったり、一致せず流したり、耐えられずに規範を守ることをやめたりする。それゆえに生み出され、流される加害性。
「怒んないでよ」なんて言うけども、怒ってないことなんて分かってる。規範から外れるのが怖いだけ。
いじめのエピソードも一回茶化して流してるのが凄い。

みのりとりえこの最後の会話、愛に溢れていて泣いてしまった。

1ショット目も良かった。ポテチの話をしてる人たちの後ろを横切る人や車。

そして笑えることも最高。

映像の質感も好み。

どうしても一観客的には萩原みのりの引退勿体無い。
生足

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