Pinch

惡の華のPinchのレビュー・感想・評価

惡の華(2019年製作の映画)
4.2
原作は読んでいない。アニメのドラマ(第1部)は見た。プラス映画という不十分な材料だけで言わせていただくと、総じて暗い青春漫画・映画と片付けてもかまわないが、それでも何かを確実に残す作品だと思う。

「向こう側」はある? ない? あるならどこに? ないならこの薄汚い有り様をどうすればいい?

ボードレールの『悪の華』は、時代の違いもあり、ペダンチックな響きが古臭く鼻につく部分もあるが、あの時代が産み葬った大切な亡骸を抱き締めて泣いているらしいことは分かる。「拾遺」の中には極上の作品がある。この漫画・映画のテーマと一致しているとは思わないし、「悪の華」というタイトルが呼び起こす表面上のイメージを利用しているように思える。テーマは悪くないので、タイトルは別だとよかったかもね。

ブルトンは「不可思議はつねに美しい。どのような不可思議も美しい。それどころか不可思議のほかに美しいものはない」と言った。仲村が抱える何ものかはこれに相当すると思う。映画とは関係がないが、アニメドラマのエンディングのテーマ曲は素晴らしい出来だ。
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