Pinchさんの映画レビュー・感想・評価

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福田村事件(2023年製作の映画)

4.6

今現在非常に危険な方向に向かうこの国において、以下のことを強く訴えかける重要な映画だ。

同じような状況下に置かれれば、人は誰しも、虐殺の加害者にも、被害者にも簡単になり得る。この国に生きる私たちであ
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アンソニー・ホプキンスのリア王(2018年製作の映画)

3.4

シェイクスピアは、当時の舞台演劇のために韻文で戯曲を書いたのですよね。物語の筋書き、役者の言葉、アクションなどを誇張して表現しないとメッセージは的確に伝えられない。このことを踏まえないと、ただの迷惑な>>続きを読む

鏡の中の女(1975年製作の映画)

3.4

最初のうちは興味深く観ていたが、自死を図り入院して以降は病状回復の都合のよいステレオタイプのように思われ、リアリティが稀薄な印象を受ける。人間誰しもその内面に幼少期から抱える痛みを抱いて生きており、そ>>続きを読む

博士の異常な愛情 または私は如何にして心配するのを止めて水爆を愛するようになったか(1964年製作の映画)

3.6

核戦争が起こり得る当時の事態をユーモアと皮肉で脚色することは、よくも悪くもそれなりに勇気の要ることだったはずだ。一方で、確かに何らかの偶発で起こってしまえばもうどうしようもないわけだから、こういう脚色>>続きを読む

七人の侍(1954年製作の映画)

4.4

黒澤明フリークでは全くないが、この作品は別格。

戦争という事態に過敏になりやすい今は戦闘シーンに引っかかりを感じないでもないが、全て現実に起こったと言ってよいことで、こうやって生きるしかなかったし、
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地球に落ちて来た男(1976年製作の映画)

4.6

別にデヴィッド・ボウイでなくても映画を作ることはできたと思うが、デヴィッド・ボウイでなくてはならなかったのだ。この映画の中のボウイは、一部のファンが言うように美しいというよりは端正だが不気味で理解し難>>続きを読む

オセロ(1995年製作の映画)

3.2

最初のうちは具体化された映像が新鮮で印象的だが、イアーゴの策略が功を奏するにしたがって演技で表現することが難しくなっていく。例えば、オセロがイアーゴの話を聞いてあっという間に疑惑に取り憑かれる場面。戯>>続きを読む

欲望という名の電車(1951年製作の映画)

4.2

安易な俗っぽさと暗示的な文学性を両立させたタイトルは天才的だと思う。落ちぶれたアメリカ南部の名家の惨めさ、都会の労働者階級の猥雑さとやり場のない暴力的エネルギーを象徴するに打ってつけの比喩。昔このタイ>>続きを読む

マクベス(2015年製作の映画)

3.4

原作と同様に余計な要素を排除した作品。権力欲という欲望は人間の本性の一つで、それが人間の歴史を動かす最も重大な要因の一つであることは周知の事実。そのような人間の非理性を表現することに集中している。>>続きを読む

ブルジョワジーの秘かな愉しみ(1972年製作の映画)

3.8

『自由の幻想』は馬鹿馬鹿しい作品と思ったが、こちらはどちらかと言えば好み。ブルジョワジーはそれなりの特権に恵まれてはいるが大した愉しみもなく、結局は彼らの人生という退屈で厳しい一本道を歩いていくしかな>>続きを読む

マリリンとアインシュタイン(1985年製作の映画)

4.0

そうか、そういうことだったのか! 豊かな物質による快楽でいくらごまかそうとしても、ごまかせない状況というものがある。それはいつだって厳然と存在し、アメリカ合衆国は厳しい危機を幾度も経験しながら最悪の事>>続きを読む

ルック・オブ・サイレンス(2014年製作の映画)

4.2

ハンナ・アーレントの言う「凡庸な悪」は、ほぼ全ての人々に当てはまる。似たような状況下にあれば自分も加害者側に立つ可能性は否定できない。恐怖の中で権力者の命令に従い、不正を正義として実行し、狂気が過ぎ去>>続きを読む

ヴェルクマイスター・ハーモニー 4Kレストア版(2000年製作の映画)

4.8

ヒットラーのベルリンとスターリンのモスクワとに挟まれた東ヨーロッパ一帯では、1930年代から1940年代にかけて、残虐非道の犠牲となった人々は2500万人に上ると言われる。この歴史的汚点は、ちょっとや>>続きを読む

17歳のカルテ(1999年製作の映画)

3.6

原作は読んでいない。スターをある程度そろえてかなり薄めて描いているものの、この映画の現実は重い。

20年以上も前のこと、アメリカのある地方都市の郊外を散歩していたとき、近くのビルの看板が目に入った。
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立ち去った女(2016年製作の映画)

3.7

ラヴ・ディアスは初鑑賞でした。長時間でも飽きさせない魅力がありますが、この撮影技術はどうしてもタル・ベーラを想起させます。アジアはヨーロッパじゃないのに、アジアという素材を使ってヨーロッパを撮影しよう>>続きを読む

パリ13区(2021年製作の映画)

3.4

よくある話に毛が生えた程度――ではないかもしれないけど――のシンプルなプロットはいいんだけど、こういう日常のゴタゴタに対する否定感も肯定感も中途半端で、このお話自体が日常の瑣末事に埋もれて終わっている>>続きを読む

ロックン・ロール・サーカス(1996年製作の映画)

4.0

”Beggars Banquet" はよく聴いた。自分の勝手なイメージだが、まるでアメリカの片田舎か中東の砂漠にいるかのような、黒人音楽と聖書と反道徳のディープながら乾いた雰囲気がよかった。ストーンズ>>続きを読む

天皇ごっこ 見沢知廉・たった一人の革命(2011年製作の映画)

3.3

最後まで観て飽きなかったものの、全体として何となく空疎で凡俗な印象が付きまとった。まあ、この国全体――特にこの世代だ――が空疎で凡俗なのだから当然の帰結である。見沢知廉はそこにメスを入れようと闘い、敗>>続きを読む

ゆきゆきて、神軍(1987年製作の映画)

4.2

戦争経験者の多くはつらい体験の全てを忘れようと必死に働き、この国は未曾有の経済発展を遂げたが、解決されずにくすぶり続ける不穏な何かは存在したままだ。「全体主義から突然民主主義に変わったこの国のことを信>>続きを読む

六つの心(2006年製作の映画)

4.4

霧のパリの中のさりげない粋な雰囲気、日常的にありがちな失望感を軽妙に映し出す巧みさ、六人それぞれの魅力的なキャラクター作り(特に女性三人の溢れる魅力)が印象的。しっかりと作り込まれているので、ただのホ>>続きを読む

緑の光線(1986年製作の映画)

4.6

ヌーヴェル・バーグの中では最も好きな作品のひとつ。世俗的な性的欲求に対する女性のアンビバレントな揺れ動きというありふれた題材を軸として、バイオリンの無調音楽、ランボーの引用など、さりげない芸術性が押し>>続きを読む

1978年、冬。(2007年製作の映画)

3.8

中国という異国の風景が印象的。外の広い世界をこの目で見に出掛けたくなるが、見たからといって自分の根本が変わるわけじゃない。場所が違っても人の本質は同じ。どこにでもある、平凡な町の、普通の人々の、単調な>>続きを読む

天才画家ダリ 愛と激情の青春(2008年製作の映画)

3.8

この映画の原題は "Little Ashes" で、ロルカがダリに送った手紙の中の言葉だとのこと。映画の冒頭にその手紙の一節が登場します。字幕ではかなり省略した訳になっていて詩情が伝わらないため、誤訳>>続きを読む

ゆとりですがなにか インターナショナル(2023年製作の映画)

3.2

ドラマは時々見て興味を持っていたので、視聴してみた。タイトルの内容がどこかに飛んじゃった感じがあるかな。『不適切…』に超された向きもあるけど、笑える場面のオンパレードで、まあ、楽しくてよかった。

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何者(2016年製作の映画)

3.2

正直内容はよく覚えていないが、原作を読んだときには、どこにでもある平凡な出来事やポストを積み重ねてそれとなくうまくまとめ上げ、無言で別の何ものかを提示する力量はなかなかだと思った。映画の方は若手名優を>>続きを読む

イングランド・イズ・マイン モリッシー, はじまりの物語(2017年製作の映画)

4.2

ロキシー・ミュージック、マガジン、モット・ザ・フープル、マリアンヌ・フェイスフル、デヴィッド・ボウイ、ゲイリー・ニューマン、そしてシェイクスピアにオスカー・ワイルド。イギリス流のどぎついアイロニーとユ>>続きを読む

ラストデイズ(2005年製作の映画)

4.0

「人生が物語と違うのは悲しいわ。同じだといいのに。明確で、論理的で整っていてほしい。でも違うわ」(『気狂いピエロ』より)

彼の夭折は前もって彼の作品の中に記されていたと思う。だから極めて自然なことだ
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夫たち、妻たち(1992年製作の映画)

3.0

たぶん誰もが辿り着きたい場所には辿り着けないわけよ。俺たちの場合、たいていの人がうらやむ地位と知性の範囲内で、こんな具合にちっちゃくあがいても無駄なんじゃないか。生きている限り同じようなことが繰り返さ>>続きを読む

BLUE GIANT(2023年製作の映画)

4.2

スポ根ならぬジャズ根。根拠ゼロで才能、努力、幸運(と不運)の全てがそろう99.999%あり得ないサクセス・ストーリー。俺が嫌いでみんなの大好きな大谷翔平サマをはるかに超える虚偽の偶像捻出。いくら何でも>>続きを読む

惡の華(2019年製作の映画)

4.2

原作は読んでいない。アニメのドラマ(第1部)は見た。プラス映画という不十分な材料だけで言わせていただくと、総じて暗い青春漫画・映画と片付けてもかまわないが、それでも何かを確実に残す作品だと思う。

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裸のランチ(1991年製作の映画)

3.3

ウィリアムズ・バロースは昔何冊か買って読んだと思うがよく分からず、タイトルと不可思議な感触以外はほぼ記憶に残っていない。映画を見て一部のストーリーを断片的に思い出した。

この映画のベースにあるストー
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ラヴィ・ド・ボエーム(1992年製作の映画)

4.5

さまざまな出来事があっさりと進行し何気なく終わって余韻を残すカウリスマキらしい作品だね。彼にしてはモノクロームのパリが舞台でフランス語という点がやや特殊に感じられるが、困窮する芸術家くずれがうごめく背>>続きを読む

おとなの事情(2016年製作の映画)

2.8

このゲーム設定自体あり得ないので、悪夢を都合のいいように見ている感じ。人間の欲望がいかに枠にはめ難いかを小さなスケールで再確認できる映画。綺麗ごとで済ませるのではつまらないし意味もない。本当のことを知>>続きを読む

スキャンダル(2019年製作の映画)

3.8

権力というものは恐ろしい。人間は、正義に基づいて考え行動しているつもりでも、自分の身勝手な振る舞いを許す権力の方に無意識に心を引かれます。極論するならば、たとえ腐敗していても支配層の権力への憧れを否定>>続きを読む

ダンサー・イン・ザ・ダーク(2000年製作の映画)

4.7

やはりラース・フォン・トリアーだった。何もそこまでしなくても…と思うものの、この作品にはそのような非難を超越する厳然たる何ものかが感じられる。彼のスタンスは、ヨーロッパの血みどろの歴史経験なくしては理>>続きを読む

王女メディア(1969年製作の映画)

2.8

何となく最後まで観た。ギリシャ悲劇においては、描かれる物理的な行動は、本物の行動を指すわけではなく、心のありようを示している。メディアは夫への復讐を遂げるため夫と自分の間にできた子供を殺害する。子の殺>>続きを読む

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