暮色涼風

インソムニアの暮色涼風のレビュー・感想・評価

インソムニア(2002年製作の映画)
4.0
ノーラン監督がこの物語で重きをおいて描いているのは、殺人事件の謎解きや犯人探しといった刑事ものの要素ではなく、"主人公の人間性"の方であると早い段階で気付いて観ていくとめっちゃ面白い。
言ってしまえば、最初から犯人は分かっていてもいい映画だった。まあキャストをみてしまえば、あの人いつ出てくるの?って感じですぐ分かっちゃうからネタバレにもならないんだけど。

とにかく、主人公が悪いヤツ。
主人公なのにこんな悪徳なやつ見たことない!
って思って観ていたら、最後にちゃんと正しいことをするか迷う葛藤があって面白い。
その葛藤や過ちが、カタチは違えど、心情的に人間なら誰しも経験したことのあるような卑しい罪で、悪い主人公なんだけど共感せずにはいられない。

主人公が不眠症になったのは、白夜のせいだけじゃなくある秘密があり、その要因によって発症したインソムニアから解放されるラストシーンは、納得のいくものでとても良かった。

キャスティング的には、アル・パチーノとドノヴァンは役にハマっているが、ロビン・ウィリアムズはやっぱりコメディのイメージが強すぎてちょっと違和感。優しい顔の変態にしたかったのだろうけど。

舞台が、炭坑跡のあるド田舎っていうのも映画的で、さりげなく魅力がある。
これが都会のビル街とかだと意味も変わってしまうしセンスも問われるところ。

ノーラン監督のエンターテイメント性の強い派手な映画が好きな人にとっては、賛否両論あると思うこの作品だけど、ノーラン監督のもうひとつの良いところは人物をしっかり苦悩させるところである。そこを観ていくと、この作品は難しい表現に挑戦していて面白い。
あんなに悩むバットマンが見れるのもノーランの演出だからであり、ティム・バートン監督のバットマンでは見れないように。
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