唯

僕たちのラストステージの唯のレビュー・感想・評価

僕たちのラストステージ(2018年製作の映画)
4.0
この時代のシンプルなコメディの在り方が素敵。ほんのちょっとのおかしみを笑える観客もまた洗練されている様に思う。粋で洒脱。
二人にとっては日常の中にユーモアが常にあって、目の前の相手をくすっと笑わせたいという気持ちが人間の真ん中にある。生まれながらのコメディアンとはこのこと。
同時に、二人の人間らしさもまた良いよね。好きなことを仕事にすることでの苦しみや葛藤も抱えつつ、共にコンビとしての時間を紡いで行く。

互いの妻が反りが合わず歪み合うのはどうだろうと思ってしまう(夫が一番輝くために最善を尽くすべきでは?)。
それぞれの妻は、ローレル&ハーディではなく夫を愛していることが段々と伝わって来て、これまでのことにも納得。

仕事としてコンビを長年続けることの難しさ。
長い時間を共に過ごすことで情が湧くのは当然だし、二人が二人を愛していたことに変わりはない。
そこには間違いなく愛とリスペクトがある。

そして、二人の仕事は、決して自分のためだけではなくファンのためでもある。
自分達がやって来たことは、自己満足などではなく、誰かの人生を明るく照らし出しかけがえのない瞬間を生んで来たことを振り返る。
ここまでの尊厳を持てる仕事ってなかなか出来ないよなあ。
命を賭してでもやり抜きたいことがある幸せたるや。

二人でやる苦労も大きいし時にすれ違うけれど、一人でやる何百倍もそこには幸福があるはず。
いかなる時も手を取り合い、苦しみも喜びも分かち合い、困った時には助け合える相手がいる。しかも、こいつしかいない、たった一人の相手だと思える、そんなパートナーと生涯を共にできるなんて、どれだけ幸せなことだろうか。

涙を堪えつつも気丈に振る舞おうと努めるスティーヴカーガンの素晴らしい演技や全身全霊のステージに涙涙でした。
唯