アメリカ中西部のサウスダコタ。ロデオで落馬し頭部に大怪我を負ったカウボーイ。後遺症と戦いながら復帰への道を探る。
知らない役者さんだけどイケメンだな、抑えた演技が素晴らしいな、しかし馬の扱いがやたら上手いな、きっと特訓したんだろうな、と呑気に観ていると、おそらく自閉症の妹や、同じく落馬事故で重度の障害を負ってしまった親友の存在もやたらとリアル。気になったので大感動の鑑賞後に調べるとなんと実際にロデオで活躍していたブレイディ・ジャンドロー自身が主演、その他のキャストも全員本人による実話ベースの作品という驚きの事実。二度目の嗚咽。北京出身の女性監督クロエ・ジャオの素晴らしき手腕によりテレビでよくある再現ドラマ的安っぽさは皆無。不器用ながら子を精一杯愛す実父の存在も素晴らしく、もうどうなってんのと。
夢を叶えられる人間などほんの一握り。夢まで行かずともやりたい仕事に就ける人間でさえ一握り。ほとんどが不本意な人生。そんな自分にどう折り合いをつけ生きていくかはとても大事で、そこを誤ると人生は苦渋に満ちたものになってしまう。人生を賭すほど好きなことがある人にほど深く刺さる作品。
人間と馬それぞれの宿命。サウスダコタの広大な景色が余計に際立たせるブレイディの閉塞感。たまらない余韻を残す大傑作。
