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ザ・ライダーのmomokoのネタバレレビュー・内容・結末

ザ・ライダー(2017年製作の映画)
5.0

このレビューはネタバレを含みます

若手の才能を大抜擢する人選の妙でおなじみのMCU、興味本位で「エターナルズ」を製作予定のクロエ・ジャオ監督(北京出身の女性!)長編作品を見てみたら、もうそれどころじゃなくてベスト級にめちゃくちゃ良い映画だった…
挫折した人間の心の動き、家族の厄介さと愛着、友達の優しさと冷酷さ、親友の人生、馬との対峙、平原の美しさと家の蛍光灯... 知り得るはずもなかった田舎のあるロデオボーイを見つめられるのは他でもないこの映画があるからです。
語り尽くすことはできません。とにかくNetflixで見れるので全員見てください。

馬と人はこんなにも心を通わせるのか、というドキュメンタリーさながらの関係性に驚く。それもそのはず主人公は本人役で、彼は実際に調教師でロデオボーイ「だった」のである。蹄で頭を踏まれて頭蓋骨が折れるなんて、なんでまだ生きてんの?ってくらい大事故だと思うけど、それでもロデオに戻りたい(というより「戻るんだろ?当然」という周りの目)なんて、よほどこの街の若者にはそれしか輝かしく生きる道が他に無いのかもしれない。だからこそ、彼が最後に乗らない人生を選択したことが、「それでも続いていく人生」を静かに力強く後押ししてくれる。
主人公が怪我を本当の意味で認識していくまでの描写がとても丁寧で好きだった。後遺症を感じつつなかなか認められなかったこと、現役時代の鞍を売ろうと思って引き返したこと、ロデオハットとシャツとスカーフをキメて鏡の前に立つなど。口数は少ないが、彼の視線や細かい行動所作のすべてに心情を感じられる。その際たるものが平原を気持ち良く走る乗馬シーン。もう言葉にできないというか、これ以上でもこれ以下でもない、他人が口出しできない彼と馬との特別で神秘的な関係がそこにはあるような気がした。
そしてクロエ監督、ほとんど本人役で事実に基づくストーリーでありながらしっかりフィクション映画を作っているところが好き。
彼女が次に作るのは特大予算のついた全く違う種類の映画になると思うけど、とても楽しみ。
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