mona

アンカット・ダイヤモンドのmonaのレビュー・感想・評価

アンカット・ダイヤモンド(2019年製作の映画)
5.0
I’m Fucked Up!

本作は主人公がただただ最悪なシチュエーションに放り込まれ、悪態をついたりする様子を楽しむ悲喜劇的なコメディ構造であり、コメディアン・アダム・サンドラーが面目躍如たる活躍をしています。

妻との復縁を迫るシーン、指摘された通り、本当に間抜けな顔をしていて最高だし、あの一連の出来事をどう捉えたら、そうなるんだ的な恋人との復縁シーンも最高。オークション・シーンの緊迫感からの、やっぱり駄目だ感も忘れ難く、私的には近年の「コメディ」の中でも最高の一本として、棚に入れておきたい作品。
(何事もうまくいかなさは、もはや「トムとジェリー」の領域であると感じました。)

その他、物事のスケールも、すごく地に足ついて、リアルに感じられるし、映像的にもニューヨークの雑踏感とか、異常な発光をするクラブのシーンとか印象的だし、アダム・サンドラー×青のスーツといった「パンチドランク・ラブ」へのオマージュを盛り込み、映画ファンへの目配せも忘れない充実の出来。

また、「金融資本主義」的なアメリカの経済システムでは、資本に「実体のない付加価値」が添付され、さらなる資本を産む訳で、本作は、その経済システムの中で、成功を手に入れるための「元本」と「取引」を巡る物語でもあると思う。

そういった、文脈で考えると、私的に主人公が全く「取引」をコントロールできないさま(※)は「実体のない」経済システムへの不信感を表していると思うし、彼の破綻の原因はギャンブラーという俗人的な性質のみではなく、その根本にある社会的な病理と見ることもできるのではないかと思う。

(※冒頭の売り場内の狭い空間での整理されない大人数の会話等、コントロールできていない感が視覚的・聴覚的にも見事だし、売場のバックヤードにいる従順な従業員や恋人へのドッキリなど、「取引」を離れると、主人公は割と物事をコントロール出来たりするといった演出も見事。)
mona

mona