Laura

彼らは生きていた/ゼイ・シャル・ノット・グロウ・オールドのLauraのレビュー・感想・評価

3.0
第一次世界大戦から100年の節目のために、主戦場の欧米では過去の映像を通じた多くの振り返り作業が試みられたはずだ。製作側の立場を愚考してみるに、使う映像資料は他の製作チームとどうしたって重複するだろうから、あとは脚本や演出で差別化を図るしかない。フィクションの領域でもルイス・マイルストン『西部戦線異状なし』(1930)をはじめ膨大な先行作品があるわけで、大変な仕事だろうとは思う。

その点、ドキュメンタリーながら、時間や場所を明示せず、特定の個人の名前もほとんど出てこず、ただ兵士たちの「声」の集積として戦争を語ろうとした本作のコンセプトは戦略としては理解できる。SNSの「匿名性」がおおきなうねりを生む時代にあって、今日的ともいえるのかも知れない。そしてフィルムに色付けすることで「古ぼけた」モノクロの映像に「新たなリアリティ」を吹き込む… けれどもその手法自体が映画的な感動を喚起するとはおもわれなかった。今日の、そして未来の観客にとって、モノクロのフィルムは着色されなければリアリティを失うだけの骨董品なのだろうか、という疑問…というより不安が残った。

むしろ本作の製作を通じて、貴重なフィルムの復元修復作業が行われたことに感謝したい。
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