Miller

彼らは生きていた/ゼイ・シャル・ノット・グロウ・オールドのMillerのレビュー・感想・評価

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戦場の映像や写真、絵に当事者達の証言が重なる形式のドキュメンタリー映画。

戦争が始まるまで、軍隊に入隊する少年たち、少年たちが訓練する状況まではモノクロの映像で映し出され、戦場に投入されてからの少年たちの様子がカラーで滑らかな映像で映し出される。

戦場でも楽しみを見つける少年たちの姿は活き活きとしており、現代を生きる少年と何も変わらない。モノクロ映像を見ているときに感じる、歴史上の事を見ているという傍観者の感覚から、カラーで動きがより滑らかな映像に切り替わるさまは、映し出される人々が生きているという感覚を強く呼び起こす。
そのため、その後の戦況の悪化で、少年たちが死に面したときの心境を語るさまや、戦友の死体が次々と映し出されるのはより辛く、より悲惨に感じる。

戦争が終わり映像がモノクロに戻ってからの、生き残って故郷に帰った後に関する証言は、彼らがどれだけ傷つけられ、虚しさを感じたのかが伝わってきた。
「石炭バケツを被った敵兵は大抵は好人物だった。お互い命令に従っただけだった」
「昔は馬を駆り、剣で戦っていたのだろうが、戦争は残虐化した。兵器の進化を一般市民は知らない。戦場では命など無価値だ」
「戦死した戦友の実家へ行くと敵視をむき出しにされた。私だけ生き延びたから。」
他にも、多くあるがどの言葉も胸に響いた。


戦場を生きた人々を映像と証言によって命を吹き込み、戦争をただ単に過去のものではなく、今現在に繋がっているその時を生きた人であることを映し出す。
それによって戦場から日常に帰った人々の証言が、自分と戦争を関わりのないものとすること、無関心でいることの加害性を強く感じさせるドキュメンタリー映画になっていた。
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