吉田晋之介

彼らは生きていた/ゼイ・シャル・ノット・グロウ・オールドの吉田晋之介のレビュー・感想・評価

3.0
第一次世界大戦時に撮影された実際の白黒無音声映像素材をデジタル修復&カラー化・高画質化し、その映像に読唇術などを駆使しアフレコを施し、当時兵士たちが実際に見ていたであろう風景を、実際の映像素材から復元するというコンセプトに興味をそそられ鑑賞。

実際の遺体などが映るシーンなどもあり、凄まじさが伝わってくる。白黒とカラーでは伝わるものが幾らかは違うと感じたので、カラー化した意味はそれなりにあったかと思う。

被写体の兵士も、みんな歯が汚いのが印象的だった。現代の俳優では撮れない、当時ならではの生々しさであろう。

実際の戦闘体験談を語るナレーションの内容も凄まじい。
映像とナレーション共に非常に貴重な内容だった。


ただ本音を言うと、映像として強烈に心にズシンとくるものがないことに物足りなさは感じた。

つまり当時の戦場カメラマンは、安全なところで撮影をしているのだ。
(見たくはないが)人が今まさに死ぬ刹那のような緊迫した映像はない。(遺体の映像はある)

それもそのはずで、当時の高価で大きな撮影機材を最前線に持って行けるはずがない。
最前線の、何倍も壮絶であろう風景はナレーションによって補われてはいるが、まぁ、その、それがかえって物足りなさを助長させているように感じた。
(重ねて言うが、人が本当に死ぬ瞬間なんか見たくないが…、しかし少し覗いてみたいというアンビバレントな欲求に駆られるのも事実)

この映画の難しいところである。
吉田晋之介

吉田晋之介