TaiRa

彼らは生きていた/ゼイ・シャル・ノット・グロウ・オールドのTaiRaのレビュー・感想・評価

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「リアル」の捉え方が違えば評価も変わりそう。こうやって修復された映像は「リアル」を獲得するのか喪失するのかっていう。

単純に第一次世界大戦中の塹壕で兵士たちがどのような作業をし、どのように過ごしていたのかを具体的に知られて良かった。塹壕戦を描く映画は多いけど、戦闘が落ち着いてる時期とか日々の生活まではあまり見ないし。帰還兵のインタビュー音源だけで物語られる戦争の記憶も生々しいが、その語りがどこかあっけらかんとしているのも凄い。地獄が一度日常化してしまえば、それを回想する時も単なる日常の振り返りになるのか。子供が年齢を詐称して志願するなんてのは、知識として知ってはいたが、実際に映像で観る「子供の兵士」はやはりショッキング。着色され、24fpsに変換、音も付けられた映像は、ある意味では虚構のレイヤーを一枚重ねたとも言える。白黒のザラザラとした無音の映像こそが「生モノ」とすれば。もちろん戦場に転がる死体の生々しさなどは修復の有無に限らず衝撃的ではあるが、一方で虚構を挟み込んでいる事で衝撃が緩和される側面もある。また、この映画で最も凄惨な場面は総攻撃時の白兵戦を語る場面なのだが、この部分は記録映像がないからか再現された当時の漫画・絵で見せられる。帰還兵の語る体験と抽象的なイメージで描かれる地獄こそが最も恐ろしく感じた。恐らく記録映像の中にはそれなりにドギツい映像もあっただろうが、敢えてその辺は使っていないのだと思う。こうした想像力を掻き立てさせる作りは重要。想像力は戦争を防ぐ唯一の武器になり得るから。
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