なす

彼らは生きていた/ゼイ・シャル・ノット・グロウ・オールドのなすのレビュー・感想・評価

3.9
モノクロフィルムのカラー化と言われると大したことないと感じるんだけど、ほんとに最近のカメラで撮ったのか、あるいは再現映像なのか分からないくらいのクオリティでのカラー化。途中、モノクロからカラーに移る瞬間の驚きは忘れられない。
更に、兵士たちの言葉を読唇術を使って再現。第一次大戦の映像だから、そこに写ってる人は戦争で生きのびてようと戦死してようと、もう誰も生きていないわけだけど、最新技術で映像を瑞々しく残してやることが戦争の記憶を留めるのにとても有効だと感じた。
何万時間に及ぶ記録映像とその他資料を丁寧に再構成した労作を見た後だと、死者をAIで再現しようとするプロジェクトみたいなものがとても怠惰で軽率だと感じる。
結構グロいんだけど、「グロいから戦争はダメだ」という安易なメッセージ性は無くて、ほんの数ヶ月前まで一般人だった兵士たちが戦場の異常さに慣れていく様、奇妙に楽観的になっていく様、そして楽観的な中でも隣の戦友がバタバタ死んでいく様を淡々と描写している。こういう丁寧な作品が日本でも生まれるといいなーと思う
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