陰謀論者X

機動戦士ガンダム 逆襲のシャアの陰謀論者Xのレビュー・感想・評価

5.0
もう30年も前の劇場版アニメ作品です。所謂「ファーストガンダム」を見ている事が前提の構成になっていますが、これが時を経て改めて見直すと色褪せるどころか輝きを増している事に驚きを感じました。勿論、昨今のアニメーション作品と比較すれば表現技巧といった部分では時代を感じさせますが、虫プロ時代からコンテを1000本以上切ってきた物語表現者としての富野監督による独特のセリフ回しや演出(富野節)に一々共感してしまう。地球に住む人類に絶望して抹殺しようとするシャアと、人類の可能性に希望を持ちたいと願うアムロ。一時は同じ志を持って共に戦った事もあったが、お互いが純粋すぎる故に再び対決し14年にも渡る因縁に決着をつける。終盤、地球の引力に引かれて加速している小惑星の軌道を変えるためにアムロはモビルスーツ一機で押しのけようとする。シャアが言う通り、名機ガンダムとはいえこの行動は無謀以外の何物でもなく「ナンセンス」だ。しかし、この無謀な行動に共鳴した多くのMSパイロット達が敵も味方も関係なく、共に軌道を変えるため死ぬことも厭わずに小惑星に張り付くシーンは大袈裟ではなく涙する。そして、その光景を見ている全ての人の「意思」が起こす奇跡。……この劇場版アニメ作品が公開された当時、自分はまだ10代半ばでしたがクェスやハサウェイといったキャラクターのエキセントリックな言動といったものが主な理由でどうにも好きになれませんでした。富野監督はこの作品に関して「35歳以上の方に、特に男性の方に見てもらいたい」と述べています。その言葉通り、その歳を越して見直したらまるで印象が異なり、感情を大きく揺さぶられた事に新鮮な驚きを感じました。「たかがアニメ」を遥かに凌駕したモノを作ろうとした富野監督の明確な意思を強く体感出来る作品ではないだろうか。
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