ひでやん

ホテル・ムンバイのひでやんのレビュー・感想・評価

ホテル・ムンバイ(2018年製作の映画)
4.0
緊張から解放させない恐怖の123分。

2008年に発生したムンバイ同時多発テロ事件にて、タージマハル・ホテルに乱入したテロリストから客を救出するため奮闘するホテルマン達の姿を描く。

情け容赦ない殺戮を繰り返す武装集団、一切の躊躇もなく、目に映る全てに銃を向ける皆殺しの悪夢。見つかれば殺される恐怖が全編を支配し、息抜きの時を与えてくれない。身を隠した直後に銃を持つ男が現れ、そのすぐ近くで息を潜める罪なき者たち。

「お客様は神様」の精神で最上級のおもてなしをするホテルマン、丸腰の彼らにある誇りと正義が力強かった。中でもアルジェンを演じたデヴ・パテルは、『スラムドッグ$ミリオネア』や『LION/ライオン 25年目のただいま』同様、誠実な人柄が好印象。

料理長に「帰れ」と言われて帰っていたらテロに巻き込まれなかったアルジェン。靴を履いていてもVIPの給仕を任されていたら殺されていたアルジェン。レストランからホテルへ行かなきゃ良かったカップル。いつだって生と死は隣り合わせだ。

命を狙われる側の視点に留まらず、武装集団側の視点も描かれ、未熟な若者たちがテロを起こしている事が衝撃だった。人間とは思えない殺戮だが、電話のシーンでは「人間」が描かれ、家族を思う若者の姿がそこにあった。

テロの背景には宗教、貧困、格差などがあり、異教徒や富裕層への憎しみが「動機」としてあるが、「目的」は金と思える彼らは非道だが哀れでもある。自分の手は汚さず、若者たちを言葉巧みに操った首謀者が一番の悪である。
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