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オオカミの家のreinaのレビュー・感想・評価

オオカミの家(2018年製作の映画)
3.5
美術館にある作品のスライドショーのようなストップモーションアニメ。この作品を作るのにどれほどの手間と時間が掛かったのだろう?ということばかりを考えてしまった。

カルトから"抜け出す"ことがいかに難しいことなのかが痛いほど身に染みた。抜け出したくても抜け出せない。厳しく閉鎖的な(洗脳されていれば快適だろう)カルト施設から抜け出したいという願望があっても、離れることができない。そこで長く暮らすともうカルトの教えやしきたりが自分の体の骨のようなものになってしまう。

途中でアナとペドロの髪の毛と目が暗い色からブロンドの髪の毛と青い目に変わるシーンは衝撃的だった。「良い子」は髪の毛と目の色が明るいらしい。何が恐ろしいかって現在でも身体的特徴での差別がなくならないという現実が存在するからだ。序盤で部屋の壁に窓が描かれる時に十字が一瞬ハーケンクロイツのように見えて恐ろしかった。あと終盤でアウシュビッツ強制収容所にある有名な"Arbeit macht frei"(働けば自由になる)と書かれた門を彷彿とさせる鉄の門(文字書きはない)があった気がする。

カルトと関わりのない外部の人間から見れば理解し難い恐ろしいものだが、そういったものを信仰することで生きていける人もいるのだろう。一般的に伝統宗教は清く正しいものという分類で、カルト(新興宗教)は新しく怪しげなものという扱いだが、今あるカルトも後年には違った扱いになっているのかもしれない。万物は流転するので「真理」のようなものは存在しないのではないだろうかと考える。では、人々は何を信じて生きていくのか疑問に思う。
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