ブタブタ

クローブヒッチ・キラーのブタブタのレビュー・感想・評価

クローブヒッチ・キラー(2018年製作の映画)
5.0
キリスト教原理主義の支配的・保守的社会のアメリカ郊外の街。
16歳の少年タイラーは自分の父親ドナルドが十年前に13人もの女性を殺した連続猟奇殺人鬼クローブヒッチ・キラー(巻き結び殺人鬼)ではないかと疑惑を持ち無宗派のノケモノ少女キャシーと共に調査を開始する·····

レビューがネタバレ表示だらけでコレは確かに見た人とじゃないととても話せない映画。
賛否両論なのも凄くわかる。
ボンクラ映画好きの飽くまで自分の妄想含む感想としては〝クローブヒッチ・キラー〟は誰か?って事は全く重要じゃなかった。
一見、真実は完全にさらけ出されたかに見えてコレ本当は何も分かってないんじゃないのか?
確かに解決は解決したけど〝クローブヒッチ・キラー〟は誰だったのか?って自分の意見としてはあの人じゃない。
クローブヒッチ・キラーの正体はクローブヒッチ・キラーでしかない。

『サマー・オブ・84』と同じく少年と殺人鬼の邂逅と対決。
今はなき銀座シネパトスで見た『フレイルティ~妄執~』を思い出した。
あれも「殺人鬼ゴッドハンドは誰だったのか?」って話で実はゴッドハンドの正体は〝ゴッドハンド〟でしかなかった。
『Found,』の「僕の兄さんはクローゼットに生首を隠してる」も衝撃だったけど、
自分の身内がシリアルキラーかも知れない、或いはシリアルキラーに確定。
しかしそこからの展開がどれも共通するのがそれ自体は既にどうでもよくて(いやよくないけど・笑)主人公(息子だったり兄弟だったり)が図らずもこじ開けてしまった向う側の世界や闇の中から出てきた邪悪なるモノをどうするのか、どう決着をつけるのかが重要でクローブヒッチ~の結末は或る意味完璧なエンディングだった。
『ツインピークス』の悪霊ボブ、『クルージング』のゲイ連続殺人鬼、それらは概念みたいな物で「切り裂きジャック」と同じく人間には不可視の存在。
その不可視の存在である(だった)筈のクローブヒッチ・キラーとついに対峙したタイラーの絶望と恐怖は『リング』のTVの中から出現した貞子と対峙した人間に匹敵すると思う。

アメリカの郊外、日が降り注ぐ白い光に満たされた中に異次元の穴のようにポッカリと空いた、突如出現するSMと変態性欲の世界を覗き込む主人公は『ブルーベルベット』の様。

それから半地下室に庭に面した窓からの侵入方法や被害者に巻かれた紐など「ジョンベネ事件」もモデルになってるよね。
ジョンベネを殺した犯人ももはや謎の彼方。

途中のある爆笑シーン(だと思う)で
エーッ!(゚Д゚)ってなってからの時系列組み換えからの展開で一気に結末迄見せるのは見事。

被害者を監禁・拷問に使った床下の秘密の地下室。(ちゃんと便器があるのが怖い)
犯行記録帳「恐怖の日誌」や大量の「コレクション」のおぞましさ。
この場面はヴァニラ画廊で毎年開催されてる(今年もやるのか?)『シリアルキラー展』で見たシリアルキラー達の「作品」「コレクション」と同じ生理的嫌悪を催すおぞましさと同時にある種の美意識、様式美を感じるのが余計怖い。

ダンカン・スキルズ監督はこれがデビュー作なんですね。
これからも要注目監督です。
ブタブタ

ブタブタ