このレビューはネタバレを含みます
父親が殺人鬼ではないかと疑う青年の話。
シリアルキラーを扱った作品の中でも、父親を疑う息子の視点から描いたのが新鮮でしたし、途中で視点が父親に変わったり、また息子に戻ったりと、トリッキーな構成もなかなかユニークでした。
ただ、こういう話なら、「真相は知りたいけど、父親が殺人鬼であって欲しくない」という息子の葛藤が見所になると思うのですが、そこがどうも弱い。
端的に言って、父親があまり良い人間には見えないし、親子関係も特に愛情がある様には見えないんですよね。
そのせいで、終盤の主人公が取る行動がイマイチ共感出来ないものになってしまった気がします。
「最後に生き残ったはずの被害女性はどうしたの?」という疑問は勿論の事、「殺人事件の被害者の知る権利を奪っていいのか?」とも思うし、「自分の父親を殺して、まともに生きれるの?」とも思ったかな…。
例えば、「父親が殺した人数以上に多くの人命を救っていた」とか「子煩悩で子供に対しては、すごく優しい」とか、そういう父親の良い部分・二面性を描けていれば、主人公の行動にもう少し納得が出来たと思うし、昨今のキャンセル・カルチャーに対する批評にもなり得たと思うんですけどね。