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人間失格 太宰治と3人の女たちのNightCinemaのネタバレレビュー・内容・結末

3.7

このレビューはネタバレを含みます

太宰と三島由紀夫って、あんなにちゃんと会話してたのかなぁ。

三島由紀夫が「あなたの小説は嫌いです」と言い、それに対し太宰は一言二言返しただけで終わった、っていうエピソードを三島由紀夫の小説の書評か何かで読んだ記憶があって、だから太宰を挑発して更に死に近づけたのは三島のような印象になっていたのが、うーん?となる所だった。

静子は恋の楽しさを思う存分味わい、望むものはすべて手に入れた陽の色気がある。一方で富栄は、色情に翻弄されて堕ちていく陰の色気。

二人の部屋には、必ずキリストのシンボルがある。静子の信仰は明るく、富栄の部屋の窓から指す光でかたどられた十字架は、赤く鋭い。

そして太宰の妻・美知子は、小説家としての太宰をただひたすら支え、愛し続ける。

聖母マリアの無償の愛と、イエスを男にさせるマグダラのマリア達。静子も富栄も、子を授かれば聖母マリアになれると思っていた。でも正妻には到底敵わない。

こういう描き方もおもしろいなと思った。そして映像が美しい。

聖書画のシンボルでもある赤と青が、最初のシーンの花畑や梅の木々、そして紫陽花や庭に咲き乱れる花々によく描かれていたし、女達の生き様と美しさをより印象づけていた。

太宰治の脆さ。自分に恋してくれた女を捨てられない割に、自分を愛してくれる女の胸にも飛び込めない臆病さっていうのが、絶妙なクズ感を生み出していた。

よろめく弱さがあるから人間は魅力的なのかもしれないと思う。
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