はちみつレモン

人間失格 太宰治と3人の女たちのはちみつレモンのレビュー・感想・評価

3.6
拝見いたしました。
非常に色々思うことのある作品でした。

まず、これは映画じゃない。蜷川実花作太宰作品プロモーション映像というか、映画っぽく撮った劇というか…
いい意味なのか、全然映画じゃなかった。
映像美重視な作品として完璧に成り立っているのだけど、本来映画とは物語作品であるはずで、今作は映画というジャンルに収まらない気がした。
そう思わせる理由は音楽にもある。どんな音楽をどんなシーンで流すか。相応しいが相応しくない、でも全てが蜷川実花過ぎて受け入れざるを得ない。ここまで頻繁に今作の様な描写・挿入音楽が挟まれること自体が珍しい気がした。
そう、珍しいのだ。撮り方一つもただのプロ。写真家の映画監督が撮るとこうなるのか、という印象。とにかく素晴らしさは目に余る程だ。

また小栗旬素敵ですね。彼は全身でエロい。声仕草の一つ一つから魅力が溢れる。
ただ彼が太宰治のことをどれほど知って役に臨んだのか、私にはあまり太宰治に見えませんでした。太宰はこの映画のヒットを知ったら言うかもしれません。自分にも出演料をくれと。もしくは"プライバシーの権利"を。

いちばん心に留まった言葉を一つ。
憎い者がいるならその者の神を恨め。

映画の根本を覆す蜷川実花監督の映像さばきと豪華な俳優陣たちの傑作な演技。エロティックで血みどろなおしゃ映像を全身で味わってください。全ては彼女の手のひらの上で。