夜飯

人間失格 太宰治と3人の女たちの夜飯のネタバレレビュー・内容・結末

2.9

このレビューはネタバレを含みます

蜷川実花監督だと言うことで興味を持ち鑑賞。表題作品は未読。

とにかく映像が美しく、色気がある。鈍い色の中の鮮やかな色遣いは蜷川実花ならではかなと思った。構図もかっこよく、毎シーンが1枚の写真として作品になり得るかっこよさ。印象的だったのは富栄と太宰のラブシーン。光に包まれた富栄の多幸感と光の中で影に堕ち表情が見えない太宰の対比が良かった。気持ちが通じあうことのない男女の表現が豊か。
演出も、雪が積もることと火葬時に花を敷く行為とリンクさせてるあのシーン好き…。場面転換に水音を使うのもセンスを感じた。

一方でストーリーは薄く、映像の良さと役者の良さが無ければ途中で見るのをやめていた。未読だから余計言葉選びとかは詩的で趣きがあって好きだと感じたが、作品を通して何を言いたいか 伝えたいかまでは汲み取れなかった。
太宰が翻弄していたように見えて、3人の女の人達は全員自分を突き通したように感じるので太宰が3人の女に翻弄される話になのかな。
3人の女の人の対比は良かった。貧しくも正妻であり太宰の子供と帰る場所を持つ美知子、地位を捨てながらも恋をして太宰の子供を得て名誉も手にした静子、なんにも持っていないからこそ太宰の子供を欲しがり一緒に死を遂げたがった富栄。持ってるものも欲しがるものも違ったけど、それぞれの目指すところを目指して行き着くところに行き着いたところは好き。強かな女はいい…。世間の目よりも自分を貫く姿勢は清々しい。

演者全員全力で良かった。登場シーンの気だるげに煙草を吸ってた富栄がどんどん太宰によって乱れて人間らしくなっていくのとかすごく好き。ふみちゃんの女優魂を感じた。小栗旬もそういう人にしか見えなかったし、死にかけるシーンの演技はすごかった。演技に見えない。

蜷川実花が好きなら見て損はない作品。
演者に好きな俳優陣が居れば見た方が良い。
夜飯

夜飯