ヤベヒロシ

新聞記者のヤベヒロシのレビュー・感想・評価

新聞記者(2019年製作の映画)
5.0
邦画で今私が最も好きな藤井監督の映画。
今作も痺れるくらい重厚で、卓越した美しい映像技術、魅せ方が光る。

今作は、日本のメディア報道のモラルを問う作品で、他国と比べても圧倒的に自国を責めない守りの国民性に対する批判でもあり、そういった意味でも極めて貴重な社会派映画である。

崇高な精神の元で真実を伝えたいのに、すさまじい圧力をかけられ屈せざるを得ないような主人公たちにはこちらも普段感じることもないような疑念と切なさを感じる。圧巻のラストシーンは、一人で観ていたなら間違いなく声をあげてその出来に拍手したくなるほどすさまじい。げんに新宿ピカデリーの私が観た回ではエンドロール後拍手と声が上がった。こんなことはなかなかどうして相当に珍しい。
それほど今の邦画にはありえないクオリティが藤井監督の映画にはあるからだ。

ただ、気をつけたいのは、相当に例の東京新聞の望月記者の個人的見解が多分に盛り込まれ、本人登場さえ何度もしているところ。
映画から得られる情報をフラットに整理しなければ、最近のニュースを揶揄するようなシーンも多くあるため、よく知らないまま望月記者に同調して内閣批判をしたくなるようなところもあるから、注意したいところ。
まあ映画の原案者だから仕方ないのだけど。

映画の出来は5点だが、望月記者が苦手な私はマイナス0.5したいところ。

兎にも角にも藤井監督作品は本当に素晴らしいです。これからも全力で作品を追いかけたいと思います。
ヤベヒロシ

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