ヤベヒロシ

青春18×2 君へと続く道のヤベヒロシのレビュー・感想・評価

青春18×2 君へと続く道(2024年製作の映画)
3.0
100%既視感。
初見なのに、1~100までみんなが知っている内容みたいな映画。こんなに超絶ベタな映画がこの世にあるのかと驚愕。
というか90秒の映画予告を観たなら、もうこの映画を観る意味はない。あの映画予告で、この映画は100%表現できているから。

映像はとびっきりきれいだが、ずっとずっとずーっとベタな内容をたらたら描くみたいな感じの「映像頼みな部分」は「四月になれば彼女は」とも似ている。

映画の醍醐味は、誰かの人生の疑似体験だったり、未知の体験だったり、つまらない日常の中では味わえないような新鮮さだと私は信じているし、これまで私が多くの映画を観てきたレゾンデートルでもある。本作のように徹頭徹尾、誰もが観たことあるようなお約束内容をたらたら流すような映画は、私の中では映画だとは定義したくない。

稀有な才能を持っていた藤井監督も、大衆映画を量産する並の監督さんになってしまったことに本当に本当に残念でならない。本当に最も好きな監督であると、過去作レビューでもずっと公言してきた。
「デイアンドナイト」「光と血」「新聞記者」など、日本映画の光のような作品を撮り続けてきた監督も、この数年の凡作量産状態は、はっきりと方向性の変化、大衆商業性への転換となっている。
かつての尖り切った感性で作り上げてきた作品こそがアカデミー賞となったのであって、今後このような並の大衆作品しかもう作らないのであれば、自然と名前は消えていくだろう。俗世間と同質化して光り輝くわけはない。

私の中ではっきりと敬愛の念に終わりを告げるような作品だった。

大好きだった監督が代わってしまった、もういなくなってしまったという意味で、泣けた作品だった。
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