MasaichiYaguchi

新聞記者のMasaichiYaguchiのレビュー・感想・評価

新聞記者(2019年製作の映画)
3.8
新聞記者の望月衣塑子さんの書籍を原案に、「青の帰り道」の藤井道人監督が「怪しい彼女」のシム・ウンギョンさんと松坂桃李さんのW主演で映画化した本作では、同調圧力が大手を振るい、為政者が不都合なことを隠蔽しようとしている世の中で、報道する立場のメディアは如何にあるべきか、そして受取手である我々は情報に流されず、真理を如何に見極めるかを問うているような気がする。
この作品では、内閣官房の内部組織の一つである内閣情報調査室、略称、内調が登場して為政者にとって都合の悪いことを揉み消したり、または都合が良くなるように情報操作するという、闇仕事、汚れ仕事を請け負う機関として描かれる。
そんな為政者のスイーパー的役割を担う機関に挑むのが新聞記者の吉岡エリカなのだが、事の発端は医療系大学新設計画に関する極秘情報の匿名ファックスで、このリークからエリート内調官僚・杉原拓海を巻き込んで中枢部の闇へ迫っていく。
本作では大学新設計画以外にも、近年、社会面で取り上げられた事件を彷彿させるようなエピソードが幾つも出てくる。
ハリウッド映画は昨今、「バイス」「記者たち 衝撃と畏怖の真実」という実話を元に為政者の“闇”を暴き出した作品を公開したが、本作はこれらに連なる邦画になると思う。
様々な恫喝や圧力が掛かる中、真実を追う者たちは自らが抱える過去の呪縛と向き合いながら、権力者の暗部を白日の下に晒すことが出来るのか?
怒涛の展開の後、ラストに込められたものが重く心に響きました。