鹿苑寺と慈照寺

屍人荘の殺人の鹿苑寺と慈照寺のレビュー・感想・評価

屍人荘の殺人(2019年製作の映画)
2.0
まず最初に僕の立場を明らかにしておく。

僕自身、推理小説が大好きで読み漁っていて、原作も既読している。

近年のクローズドサークル物の推理小説は行き着くところまで到達していて、王道の古典的本格推理小説は減ってきている。そんな中で流行りになっているのは、クローズドサークル物×特殊設定のミステリである。本作がまさにそれに当たる。

原作を読んだときに僕はこの特殊設定にまったくハマらなかった。この特殊設定というのはとても斬新かつまったく読んだことのないクローズドサークルだと思うけれど、好みじゃない。これはもう仕方がないだろうと思う。好みだからね。

そんなまったく新しい推理小説がどういう風に映画化されているのかなあと思って、鑑賞してみた(公開されたときは予告を見た上で明らかに地雷臭がしたので、観るのをやめた)。

で、本作のお話。

ゾンビ物やるんならちゃんとやれよ!!!
ぬるいことすんなよ!!!

というのが序盤の30分まで鑑賞してみて思ったこと。それは最後まで変わらなかった。

推理小説におけるクローズドサークルというのは、魅力的な舞台装置であり、あくまで主体は事件であり、その場にいる登場人物である。原作は少なくともそれは守りつつ、しっかりと密室推理劇をやっていたように思う。文章であれば、舞台装置のことも推理劇も幅を取って書ける。

でも、映像作品は違う。大抵の作品は、上映時間は2時間程度なので、限りがある。

そんな中で重要な舞台装置であるゾンビとのあれこれに時間が割かれ、「あれ?原作ってこんなんだっけ?これってゾンビ映画やん」との思いが拭えなかった。

そして、何よりもゾンビとのあれこれの描写が多いにも関わらず、ゾンビの描写が酷い。

ゾンビを撃退するときの描写。
ゾンビの頭部を槍で突き刺すときに頭部が頭蓋骨のアニメーションになるアレ。

ゾンビ物やるんならちゃんとやれよ!!!
ぬるいことすんなよ!!!

本当に酷かった。ゾンビ映画を一度でも観た人ならわかると思うけれど、本当に冷める。
「アイアムアヒーロー」はまだ未鑑賞なので、ゾンビ描写だけさらっと見てみたけれど、違いは歴然。

できないならやらなければいいのに……。

小説だと特に疑問に思わなかった点が映像化すると次々と違和感に変わってしまうのも難点。
そもそもゾンビが発生した時点でどうにかして下山すればいいのでは?
わざわざ館に立てこもる理由なんてある?
周囲にゾンビがいるのにもはや部屋割りなんてどうでもいいでしょ。
館に紛れ込んできたおばはんが静原に嫌味を言うシーンの必要性。

もう1点どうしても気になるのは、剣崎と明智。明らかに他の登場人物と比べて浮いている。推理するときの変なジェスチャーとか要らないから。

そんな作品にあっても神木隆之介さんや山田杏奈さんは最高だった。これだけが唯一の救いでした。

以下は個人的なメモ
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劇中の音楽とタイトルクレジットは良き。

明智と剣崎のキャラクターが明らかに浮いてる。

ゾンビ物にしたいのか、密室推理物に、したのか?

心臓の鼓動をドキドキっていう効果音で表現すんのダサい。
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