栞

行き止まりの世界に生まれての栞のネタバレレビュー・内容・結末

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このレビューはネタバレを含みます

(ドキュメンタリーだから当たり前ではあるが)この作品に映る3人の姿・言葉はすべて本物であり、演出や台詞がゼロなのだと思うと、一言ひと言が深く刺さった。“全米でもっとも惨めな街”と揶揄されるような街に生まれ、恵まれない家庭環境の中で育ってきた3人とその関係者たちが、幸せを求めて必死に生きる姿に心奪われてしまう。この作品の監督は、作中の3人のうちの1人なんだよな。監督本人が当事者だからこそ聞けた言葉、映せた映像ばかりだと思う。ビン・リュー監督にしかつくれない作品。

とくに心に残っているのは、キアーの「生まれ変わっても黒人に生まれたい。俺たちはいつも問題に立ち向かっているからだ」、ザックの「自分の敵は自分。クソみたいな人生を選んできたのは自分なんだ」、ビンの「この映画を撮りたいのは、前に進みたいからだ」という言葉たち。自分という人間に誇りと責任をもち、必死に自分の人生を生きようともがく3人のこれからの道がどうか拓けていてほしいと願わずにはいられない。それは3人に限らず、ビンの母親も、ザックの奥さんと子供も、みな平等に叶ってほしい未来。
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