海を見たことがなかった少年

世にも怪奇な物語の海を見たことがなかった少年のネタバレレビュー・内容・結末

世にも怪奇な物語(1967年製作の映画)
5.0

このレビューはネタバレを含みます

学生時代にたまたまNHKでやっていたのを見たのだったか、それともフェリーニの名に釣られて借りたビデオで見たのか、最初の出会いの記憶は定かではないが、一度観ただけで鮮烈に突き刺さるほどの衝撃を受けた事は確かだった。

3エピソード目の「悪魔の首飾り」。この作品がとにかく好きである。
監督であるフェリーニは、ポーの原作の内容も知らずに作品を撮ったと言っていたと自分は記憶している。

この作品を見て以来、悪魔といえば真っ先にイメージするのは、白いワンピースの美しい幼女が笑みを浮かべている姿になってしまった。
なんというフェリーニの想像力よ!
山羊頭でもなければ黒い皮膚で角の生えたコウモリの様なものでもない。異形の恐怖よりも惹きつけられる様な姿のものにこそ真に悪魔的な魅力があるといえるのだから。

そして主人公のテレンス・スタンプの頽廃的で病的な雰囲気もこの作品に実にしっくりとはまっている。
延々と車を走らせる場面の狂気の様も観ている方までおかしくなってしまいそうで、自分自身が作中に入り込んでしまったかのように錯覚させられる。

不気味な怖さよりも怪しくも逃れられない魅力が勝る、自分に多大な影響を与えてくれた大好きな作品だ。むしろ悪魔の少女役マリナ・ヤルの罪深いばかりの美しさをみるだけでもこの作品には充分な価値があるというのが本音。きっとそんな同志は他にもいるはず…!

海を見たことがなかった少年さんの鑑賞した映画