うえびん

スウィング・キッズのうえびんのレビュー・感想・評価

スウィング・キッズ(2018年製作の映画)
4.3
切なくも痛快な物語

戦争、国籍による分断
統治する側とされる側
同じ民族同士のイデオロギーの違いによる分断
自由(資本)主義と共産(社会)主義

国籍とイデオロギーの違いを超えるべく結成された
チーム「スウィング・キッズ」

一人ひとりのダンスへの情熱
上達と共に強くなるチームワーク
それが結実した発表の場
タップのリズムとブラスバンドの演奏が痛快だった

白人の中の黒人
南の中の共産主義者
北の中の自由主義者
戦場の中の女

人の違い
生まれた場所、肌の色、育つ場所
刷り込まれる価値観や思想
その違いが人を分断し争いを生む

国と国との争いは戦争となる
人の違いが力の不均衡を生み暴力が日常化する
強い立場と弱い立場
虐げる者と虐げられる者
前者は後者の置かれた状況に想像が及ばない

スウィング・キッズのメンバー5人
それぞれが弱い立場で虐げられていた5人
同じ立場に置かれた者同士は、互いを思いやれる
5人の力をダンスに昇華して暴力に抗った結果は…

互いを思いやったがゆえの結末は切なかった

東洋人の西洋文化に対する憧れ
本作品から感じられたその憧れは、多くの日本人
にも共感できるんじゃないだろうか。逆はどうな
んだろう。西洋人で東洋文化に憧れをもつ人は、
少ないんだろうか。自文化を尊ぶ心が、西洋人の
方が強いのだろうか。戦勝国と敗戦国が関係する
のだろうか。

どの時代、どの国に生まれても、ある価値観や思
想の刷り込みからは逃れられない。それを自覚し
違いを許容してゆくことに希望を見出だしたい。
切ない余韻の中、そんなことを考えさせられた。
うえびん

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