ヨダセアSeaYoda

スウィング・キッズのヨダセアSeaYodaのレビュー・感想・評価

スウィング・キッズ(2018年製作の映画)
4.4
観た回数:1回
直近の鑑賞:映画館(20.03.11)
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 僕はもう2度と観ません。というかきっと観られません。
 そして誰にも薦めません。なんというか、責任が取れないので。

 ですが、僕の点数的には高いですし、すごい作品だと思うので、実際色々な方に観てほしいです…

 とりあえず、情緒を振り回されすぎてボロッボロになりました。
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【STORY】
 収容施設のPRのため、出し物をするよう命じられた黒人ジャクソン。様々な理由で集まった3人の踊り手。そして、政敵・国敵として関わりたくないのに、タップダンスに魅せられてしまった主人公ギス。

 差別や理不尽な暴力の蔓延する収容所で、ダンスに救いを求めた者達の、天国と地獄のドラマ。


【魔法の靴】
 「魔法の靴を履いている間は、全て忘れられる」
 ダンスチームの女性がそんな台詞を言います。
 それは、映画を観ている僕らにとっても同じでした。

 理不尽の横行、差別の蔓延、思想の違いによる暴力の連鎖、何より戦争…
 そんな地獄が広がる映画の中で、彼らがダンスシューズを履き踊っている時間だけは、音楽と興奮に包まれることができ、本当に「全て忘れられる」のです。

 ミュージックビデオのような映像と小気味良いタップダンスの音に、自然と口角が上がります。
 そして靴を脱げばまた、現実という地獄。彼らも観客も口角が下がります。

 一言で言うなら、
"ダンサーズ・イン・ザ・ダーク"。

 『ダンサー・イン・ザ・ダーク』では歌が彼女を救っていましたが、正直歌もちょっと悲しげで不気味なので観客が救われたかというと微妙…笑

 今作では映画の中でも外でも、ダンスと音楽だけはしっかりと、人々を救っていました。
 「ずっと踊っててほしい、踊りやめないで…」と祈ってしまうような作品でした。


【そして…】
 裏で色々と良からぬ動きが判明していき、主人公ギスも観客も手に汗握る中で始まるクライマックス。

 最後は泣きました。本当に泣きました。


【戦争映画だった】
 今作はダンスの映画でもありますが、真に戦争の映画でした。

 戦争映画は "胸糞" などという言葉では片づけられませんね。
 この物語自体はフィクションでも、朝鮮戦争や様々な戦争が、過去でも現在でも人々の幸せや夢を奪っていることは、紛れもない事実。

 平和ボケした日本人の1人である僕も改めて戦争の理不尽さ・悲惨さを突きつけられ、戦争への嫌悪感で号泣するほどの体験をさせられた今作は、本物の傑作だと思います。

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【個人的ランキング】

《2020年日本公開ベスト10》
①燃ゆる女の肖像
②パラサイト 半地下の家族
③フォードvsフェラーリ
④TENET テネット
⑤ジョジョ・ラビット
⑥Mank マンク
⑦シカゴ7裁判
⑧ザ・プロム
⑨レ・ミゼラブル
➓スウィング・キッズ
ヨダセアSeaYoda

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