なちゅん

天気の子のなちゅんのレビュー・感想・評価

天気の子(2019年製作の映画)
4.3
素晴らしかった。
あの雨粒のきらめき。あの光の眩さ。
「パラレルワールドだ、もしくは未来図だ。」と想起させるほどに緻密で正確な街並み。
透明感が美しかった。

このエンディングはハッピーエンドだと私は思う。
この手のストーリーは起承転結として、最後に「調和」や「和解」を持ってくることが常套であり “正解“ だと思うのだけど、この作品は違う。救われているようで世界には救いがない。大人たちが選択してきた結果狂ってしまったイマの中で、年若い自らを犠牲にして調和に導いていくのではなく、その「良い子ちゃんプロット」に対して反発するように2人の幸福を選び取るというハッピーエンド。若き無謀さを、若さ故の自己中心性を、自己犠牲という古式ゆかしい美徳に対抗させて掴むハッピーエンド。
帆高のガキっぽさには辟易するのだけれど、それはその「ガキっぽさ」を自分が通過してきたという自覚があるから。只中にある彼にはまだ分からないもの。人生がそんなに甘くないというのは人に教えてもらうものではなく、自分で痛みを感じて初めて理解できること。ガキくささというリアリティが良かった。

世界は回る。社会は動く。
雨が降ろうが晴れようが、進んでいく。
だから彼らに世界を変えた責任があったとしても、わざわざほじくり返して責めたりはしない。世界はそんなに暇じゃない。
雨なら雨で、水没するなら水没するで、なんとかうまくやっていくのだ。馴染んでいくのだ。

観終わった後、明日も雨でもいいかな、と思った。
雨が好きになれるわけじゃないけど、まあ雨でもいいかって。
なちゅん

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