Yuto

天気の子のYutoのレビュー・感想・評価

天気の子(2019年製作の映画)
3.3
レンタルで鑑賞

公開当日に劇場で1回観ました。
最初はエゴイスティックな内容が好きになれませんでしたが、2回目の方がいい印象でした。なので改めて書き直します。


まず視覚的には私の知る全てのアニメ映画の中でもたぶん一番です。

本作の最も重要な舞台装置である「天気≒雨」の描写の美しさは言うまでもありませんが、映画全編を通してアニメーションに対する新海誠のこだわりを感じました。
セル画アニメの柔らかさ・温かさと共に、3DCGIの活用も非常に上手かったです。

キャストの演技も素晴らしかったです。
一番良かったのは小栗旬かな。本田翼だけちょっと微妙でした(笑)。


若さ、そして情熱的なほどの愛。
それらの理屈では説明できないようなものを、「天気」という現象に当てはめた映画のコンセプトは好きです。
十代の人間の持つ不安定さや純粋さみたいなものをあくまでも「まっすぐ」に描くところは『君の名は。』にも共通するところであり、それを関東中を巻き込む巨大なスケールで描く新海誠の発想とガッツには、私はかなり好感が持てました。


しかし、本作を映画として良かったかと聞かれたら、首を斜めに振りたくなります。

本作で一番気になったのは、全編を通して主人公・帆高によって語られるモノローグです。
抽象的な内容だけでなく、映像だけで普通に理解できるようなものを、丁寧にモノローグで解説する必要はありません。まるで絵本や教科書を朗読しているかのような感じで違和感を覚えました。
作り手が観客のレベルに合わせているような感じであり、それだけでもせっかくの世界観の奥深さが損なわれつつあります。
それゆえに、主人公・帆高の底知れない情熱に対しても、クライマックスで置いてけぼりにされてしまいます。
そこがかなりもったいなく思いました。

そして、恐らくこれは新海誠の最もこだわっているところだろうとは思いますが、劇中で歌を流すのは個人的には好きになれないです。
え、これで終わり?みたいな唐突なタイミングで歌を流したり、映画を盛り立てるためにMVっぽく映像編集するのは、映画の魅せ方として少し安易です。
キャラクターのセリフと歌の歌詞が混ざってごちゃごちゃしてしまいます。


全体的な印象としては、良くも悪くも新海誠という人物が詰まった映画でした。
上記の余計なモノローグをなくすだけでも映画の世界観に遥かに奥行きが増すと思います。

内容的にかなり賛否が分かれそうですか、好きか嫌いかと聞かれたら私は好きです。そして同時にもったいないとも思いました。
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