このレビューはネタバレを含みます
不在だった親に必ず再会しなくてはいけないのか、という「親探しモノ」の根本を問いている。
皆がいるべき場所でウィルデンと決別している。
冒険の中で、イアンは兄が「父」の役割をしてくれていたことを思い出している。日常の遊びや会話を共にしたのはバーリーだった。ならバーリーも「父」なんじゃないか。この気づきを得た時、イアンの冒険は終わったのだろう。
裏付けるように最後父が蘇る時、イアンは遠くから見ていることを半ば選択している。もし会えてしまったら、過去の精算はできるが、未来的でないから。これを最初で最後の思い出としてイアンはずっとウィルデンを背負わなくてはならなくなる。母の今の恋人も許せなくなる。
一方、生前の父を知っている兄バーリーは父と触れ合い、会話をしている。彼にとっての父との再会はポジティブであるからそう描かれている。今まで何度も思い出した数シーンにあらたなシーンが追加され、これまでの苦しみは一度終わる。
1番印象的なのは母の立ち位置。「お父さんに会ってきて!」と笑顔で話しかけ、それだけ。恋人であり、夫であり、父であるウィルデンを過去の人とした強さを感じた。この表現は、一度でも愛し信頼した人を、過去とせざるを得ない、シングルペアレントが共通して直面する孤独な戦いを認知させる。
冒険のその後がかなり精巧に描かれている。どうウィルデンを通過するか、という話なんだろう。
ストーリーはすごく挑戦的で、分厚い耐久度がある。だから人間ぽい生命体というキャラクターデザインにしなくても成り立った気がする。逆に肌色に配慮して青い肌というのもありがちで目が惹かれない。ただ、身体の特徴に意味付けが無いところは新しいなと思った。