安藤エヌ

2分の1の魔法の安藤エヌのネタバレレビュー・内容・結末

2分の1の魔法(2020年製作の映画)
4.5

このレビューはネタバレを含みます

とてもディズニーらしい&ディズニーにしか作れない映画だと思ったのがまず第一印象だけど、特に女性キャラクターに対しての描写が秀逸だと思ったので以下、Twitterでも伏せ字機能を使って書いた感想を。

・兄弟の母親が夫亡き後、新しいパートナー(ブロッコ巡査)を作っていることについて
あのお母さんの性格なら、夫との思い出を大切にしながらも前を向いて自分の人生を生きていくだろうしすごく納得できる設定。でも今までのディズニーが彼の存在を描いてただろうかと思うと、そこはどうだか分からない。そういう点でやっぱりディズニーは常に作品における価値観をブラッシュアップしてるんだなと思いました。
「2分の1の魔法」の物語って、主軸が「兄弟2人による冒険」で副軸が「女性2人の(兄弟の母とマンティコアという野生にルーツを持つ女性)兄弟を守るための旅路」だと思うんだけど、マンティコアのことはまた別に書くとして、お母さんが強いのなんの。特に最後の戦闘なんかめちゃくちゃかっこよくって思わずひゃ~っとなってしまった。彼女は自分の子どものことを最優先で考えながら(愛する夫との間にできた子だし、2人の母親としての本能もある)、だけど自分の人生もちゃんと考えられている存在なんですよね。だからこのパートナーがいる、っていう設定はほんとにすごい。それだけで彼女の性格や人となりを表してる気がする。
そしてブロッコ巡査とバーリー&イアンの間の関係性や空気もすごくよかった。新しいお父さん(になるであろう)人を前にして、自分たちの大好きなお父さんと比べない、彼は彼で、お父さんはお父さん。どちらもお母さんが愛した人なんだという思いが見て取れるふたり、本当に良い子。少しからかった風な巡査への振舞い方がものすごくよかったです。(口癖を真似したり、例の変身シーンだったり)

・マンティコアの自我の解放
この場合、おそらく彼女が女性であるかないかがかなり重要になってくるんだけど、本来の自分を忘れかけていたところを兄弟の言葉によって取り戻して自我を解放し、最終的にラスボス戦で一役買うほどの力を見せるっていう描写がとても良かった。内に秘める女性の野生的な部分って、本当はとてもパワフルで美しいんだよ、ということを伝えたかったのかな。ディズニーにおける「女性」の描かれ方って、人によっては現代的な価値観を押し出しすぎてあまり……という人もいると思うけど、私はそのあたりはすんなりと観れるタイプなので、今回の描写も現代ディズニーらしくて良いなと思いました。

これ以外にも、もちろん兄弟間の展開にも色々と語りたくなる部分が多くて、そういう余地を受け手に残しつつ、最高のエンタメとして仕上げているあたりがディズニーの真骨頂……というか、持ち前の素晴らしさなんだよなぁと思える映画でした。久しぶりに観た映画が「2分の1の魔法」で良かった!

日本語版主題歌の「全力少年」、吹替声優さん(お母さんの声が春菜さんだったとはびっくり)ともにぴったりで、エンドロールまでじっくり楽しませてもらいました。
安藤エヌ

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