映画としてはホラー寄りのダークファンタジーで描写もディズニーにしてはややグロテスクであり、今までのマーベル映画とは一線を画している。ホラー映画出身のサム・ライミワールド全開と言ったところだね。あと、とにかく映像表現がが奇抜な上トリッキーで目を引く。
あらすじはまさに冒険活劇で視聴者の思い通りになかなか進まない感覚が見ていて非常にワクワクした。
ドクター・ストレンジの心情や恋人を失った未練、個人の幸福を犠牲にしてでも守る大義、そしてそれに対する葛藤をしっかりと描けているし、一方ヴィランのワンダも、彼女の母親としての失った息子達に対する狂気的な愛情と母性、そして違うユニバースの幸せな自分への嫉妬を表現できているし、何よりもめちゃくちゃ強くて、イルミナティのメンバーを惨殺していくシーンは圧巻した。そして、黒魔術に囚われて狂気に満ちアメリカチャベスの能力を奪おうとするワンダのメイクや表情演技はシャイニングを彷彿させるほどの狂演。それに加えて、ダークホールドによって生み出された邪悪な人格であるスカーレットウイッチを克服し、最後は自己犠牲を伴いながらもダークホールドの黒魔術を封印し、ワンダという善なる人格を取り戻し，ヒーローに戻るというヒーロー映画の王道ながら、胸が熱くなるラストもよかった。
しかしまぁ、ワンダはなかなか報われないなぁ。幸せになってほしいし、是非カムバックしてほしい…
次に悪かった点についてだが、やはりドラマ「ワンダビジョン」未視聴者に対して優しくない点だ。ヒーローだったワンダがスカーレットウィッチとなり闇堕ちしたのかについての描写はかなりあっさりしていたし、ウェストビューでの事件や息子たちの説明はほぼ皆無と言って等しいから、ワンダビジョン未視聴者は、ドラマ見なくても話はわかるけど、詳しい登場人物の設定や出来事の経緯についてはわかりづらいのではないか。確かに、未視聴でも映画視聴に問題はないが、皆等しく入場料を払っている訳だし、この点少し不平等に思われ、未視聴勢お断りみたいな風潮にならないかこれからのMCUが心配である。
ドラマ未視聴だと話についていけないという、MCU作品にありがちな映画一作内であらすじが完結していないというオーディエンスに優しくない点と映像酔いしやすい点は減点要因であるが、脚本や話の流れが秀逸で、あっという間に二時間が経ち、エンドゲーム以降のここ最近のマーベル映画で自分的に一番の高得点です！
