常盤しのぶ

ドクター・ストレンジ/マルチバース・オブ・マッドネスの常盤しのぶのレビュー・感想・評価

4.8
『良くも悪くもMARVEL作品だった』というのが観終わった後の第一印象だった。というのも、今作のヴィランが何故ヴィランとなったのかの描写がかなりガッツリと省かれていたからだ。一応ないことはないのだが『だいたいこんな感じだよ、わかったね? じゃあ次』といった具合に物語がサクサク進んでいく。MARVEL初心者にはまったくオススメできない作品となってしまっている。

しかし、それでもしっかりと面白いのが本作の凄いところだ。そもそもMARVEL原作のコミックでも『今回の敵はこいつだよ。詳しく知りたければ〇〇を読んでね』『こいつが何故こう言っているかは〇〇を読んでね』などと省略されることが多い。本作の構成から『お前ら忘れていると思うけど、ウチもともとアメコミの出版社だからな?』というメッセージも感じ取れる。

死霊のはらわたで人気となったサム・ライミ監督がMARVELの莫大な資金力を使って映画を作ったらどうなると思う? そう、クッソ豪華なホラー映画が出来上がる。ドクター・ストレンジに長めの嘔吐をさせようとして実際にさせるのは多分サム・ライミだけだと思う。

今回はマルチバースということで実に様々なストレンジが登場する。そこも本作の見所のひとつといえる。ストレンジはどんなストレンジでもかっこいい。そう、どんなストレンジでもね……。私は本作をほぼ最前列で堪能できたので大満足である。

それはそれとして、本作のホラー感は同監督の無印スパイダーマン2を彷彿とさせる。女性陣の悲鳴や、マルチバース先でのひと悶着などなど、監督のフェチズムが見えてとても良い。

本作に限った話ではないが、そろそろワンダには幸せになってもらいたい。愛する人を奪われ、擬似的な家族を持つことも許されず、しかしマルチバースの他の自分は幸せな家庭・子供がいることを見せつけられ……この先の何処かで彼女が幸せになることを願って止まない。