このレビューはネタバレを含みます
2019年のアラバマ物語。
希望と勇気、真実の話。
実話に基づく。
正攻法でグイグイ見せていく。
主人公は、黒人弁護士。
ある死刑囚のために、裁判を戦う。
警察・検察の捜査があまりにも杜撰すぎる。
ちょっと調べただけで、証拠をでっち上げられていることが分かる。
実際の事件のあった1980年代と、
1930年代の『アラバマ物語』で描かれた人種差別の状況があまり変わっていないことにまずびっくり。
白人検察官が、主人公に、
「アラバマ物語博物館でも見学したら」とバカにする。
当局の意識が全然変わっていないことがこの場面で分かる。
主人公が、死刑囚の妻に会いに行ったら、近所の人達が集まって集会のようになったというシーンにも心動かされた。
ちょっと事情を聞きに行っただけなのに。
それだけ黒人社会の期待が大きいと、主人公は励まされる。
この国でも、他人事ではない。
袴田事件の報道を聞くと、日本でも冤罪はしばしばあったということなのでしょう。
主人公や主人公の協力者は、周りから脅迫され、何度も心折られそうになりますが、その度に勇気を振り絞って乗り越えていきます。
主人公が、嘘の証言をしたマイヤーズを真摯に説得するシーンが白眉でした。
そして、マイヤーズが嘘の証言をしたことを認める法廷でのやりとりが最大の山場です。
主人公との2人だけのやりとりで本心を話たとしたとしても、法廷ではマイヤーズも心折れて決意を翻すのではないかとハラハラする。
主人公に感化されて、マイヤーズも、真の勇気を持つ人間の1人にひっくり返った…。
一旦再審請求は却下されるものの、真実の力は強い。
マスコミの力も借りて、無罪を勝ち取ることができました。
この裁判を皮切りに、冤罪者を続々と救っていったという事実がすごい。
いずれにせよ、アメリカでの死刑判決の過誤率の高さに驚きます。
ラスト、主人公から、
「国のありようは、貧困層や弱者、死刑囚がどう扱われかにあらわれる」というメッセージが発せられていました。
その言葉が静かに胸に響きます。
『クリード』の、マイケルBジョーダン、ここでもめちゃくちゃかっこよかった。
脇を固める、ジェイミーフォックス、ブリーラーソンも良かったです。
他の方もおっしゃっていますが、邦題はもうちょっとなんとかならなかったのかなと思います。
原題は『JAST MACY』になってました。
ネット記事では、“公正な慈悲“のニュアンスじゃないかって、示唆されてました。
こっちのほうが良いよ。