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21ブリッジのRenのレビュー・感想・評価

21ブリッジ(2019年製作の映画)
3.5
悪く言えば既視感があって新鮮味の無い、良く言えば古典的なオールドスタイルの刑事ものを現代リアレンジしたような及第点サスペンスといった趣。それ以上でも以下でもない気はしたが、でもしっかり楽しめた!

追う汚職警察と追われる極悪犯という非常に単線的なストーリー。ただその99分という短い線の中に、叫ぶ走る銃撃するといったパッと見ても分かりやすいパワーと疾走感が常に備わっていて非常に良かった。たった一夜の捜査劇のスピード感持続編集が素晴らしい。飽きさせないように、物語は足踏みしても映像は動き続ける。

これだけ銃弾が飛び交えば当然こうなるだろう、という適正量の痛みと出血描写があって、決してスタイリッシュではない泥臭さも良かった。抜かり無く人が死ぬ。単にギョッとさせたいのでなくそういう世界なのだという説明のためのゴア。中心人物に弾が当たらないご都合アクションもそれはそれでクラシカルで面白かった。

怒りに任せ犯人を殺めてきた問題児の警官主人公も、薬物も銃撃も街中カーチェイスも2億回擦られてきたザ・アメリカンサスペンスだが、前後半でテーマが大きく転換する。ただしそれもベタからベタへの移行だし予想できすぎるため、観客の軸をブレさせることにはイマイチ成功していない。

主人公像にも不満が残る。
国家権力側の彼が暴力で問題解決してきた過去を内省しきることなく、その性質が物語のためだけに消費された感。もちろんそういうスタームービー的な傑作はごまんとある。でもこの映画の作りはそうはなっていないし、結局キャラクターが筋書きのために動かされているような軽さが出てしまったのが勿体無いと思った。故チャドウィック・ボーズマンが素晴らしい俳優だけに、そういう箸(橋)にも棒にもな全体コンセプトが惜しくなる。

タイトルの『21ブリッジ』はマンハッタン島と外部を接続する橋の数で、今作ではその全てを封鎖するのだがそれ自体の描写が無い。日本映画だったらそれだけで一本の映画になってたぞと思う一方でなぜそれをタイトルにした?と思ったのが、いわば密室状態のマンハッタンは、「孤立無縁」「閉じられたコミュニティの内部抗争」の象徴として置かれているからこそのタイトルなのだと勝手に納得した。

その他、
○ 事件解決を小道具一個に頼り過ぎでは?
○ J・K・シモンズを出しておいて何も無い訳がないでしょう。もう少しそこのキャスティングに工夫を!
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