アキラナウェイ

シークレット・ヴォイスのアキラナウェイのレビュー・感想・評価

シークレット・ヴォイス(2018年製作の映画)
3.8
スペイン映画って、良作が多い印象。

カルロス・ベルムト監督作品は初鑑賞。「マジカル・ガール」なる作品でサン・セバスチャン国際映画祭グランプリ・監督賞の2冠に輝いたそうな。

記憶を失い、歌えなくなってしまった歌姫と、そんな彼女に心酔し、かつての彼女のように歌える1人のシングルマザー。

人気絶頂の中、突如表舞台から姿を消した国民的歌手リラ・カッセン(ナイワ・ニムリ)。それから10年、リラは原因不明の発作に倒れ、記憶喪失となり歌う事さえ出来なくなる。そんな中リラに人生を捧げてきたマネージャーのブランカ(カルメ・エリアス)は、リラの曲を本人さながらに歌いこなす女性ヴィオレタ(エバ・リョラッチ)と出会い、極秘裏に「リラにリラの歌を教えてほしい」という奇妙な依頼を申し出る—— 。

リラとヴィオレタ。
2人でリラ。

ぱっつん前髪にエキセントリックなヴィジュアル。無機質な印象すら覚えるリラ。そんな彼女に憧れ、模倣し続けてきたヴィオレタ。

時折挿し込まれる寒々しい砂浜と海の映像が美しい。

しかし、その海は命の源の象徴でありながら、その命が還る場所=死に場所。

リラの助けになろうと、誰にも知られずに彼女の歌の指導に励むヴィオレタ。しかし彼女の娘のマルタは、母親が自分を見ていない事を鋭く察知し、その生活は荒んでいく一方。

ヴィオレタとマルタ。
母と娘の物語。
そして、隠されたリラと母との物語。

舟の折り紙が鶴に折り直されていた事が象徴的。折り紙は折り直せば、違う形に変えられる。

ラストは何とも物哀しい。
ヴィオレタにはその末路しかないのか。
リラはまた孤独になってしまうのか。

オリジナルとコピー。
それは謂わば、母と娘の関係そのもの。

この作品を観ていたその時はこのテーマを掴みかけていた気がしたけど、振り返ってみると、寄せて返す波のように、今は理解からは程遠い所に行ってしまった気がする。

でも、観ていた時の高揚感はこのスコア。