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セメントの記憶のandardのレビュー・感想・評価

セメントの記憶(2017年製作の映画)
3.8
何度かウトウトしつつ見た。
最初の採石場のドローン撮影から、きれいに計算された映像がつづく。
キレイなんだけど脈絡が読めずに、色んな映像やモノローグが入るので興味が持続しにくい。
しかし、労働者達の生活の様子や、心情を少し垣間見れたような気がしたので、それて十分だと思うようにしている。

他の映画を目当てに来たら満席で、近くでやっていたのでこれを選んだため事前情報が少ない中で見たが、期せずして来日中の監督によるQ&Aがあり、理解が深まった。
何故労働者にインタビューする形式を選択しなかったのか
→労働者は不満を言ったことが雇い主に見つかるとクビになる危険があり、職を失うことは彼らにとって致命的であること。そもそも彼らは無口。
そのため沈黙する彼らを撮ることにした。

彼らの大半は空爆が続くシリアから逃げ出してきた。しかし、レバノンは彼らを受け入れず、シリアに追い返そうとする。難民キャンプには入れない。
建築現場現場であれば、労働力が必要で雇ってもらえる。ただし奴隷のような扱い。12時間働いてタバコ1箱分の賃金であり、そこから家賃等が引かれる。(家賃って言うけど、建築現場の地下のコンクリートの床にボロボロの薄い敷布団を敷いてるだけ。)

映画ではそういった悲惨な状況は詳しく語られない。

空爆によって家を壊されコンクリートの下敷きになる環境から逃げてきて、今はコンクリートを使って建つ高層ビルの建築現場で働きながら、コンクリートの床に寝ている。そんな話をコンクリートの材料を取る採掘場から始めるのは悪くないと思った。

内戦が起きるとレバノンに逃げて建築の仕事について、内戦が終わったら国に戻って壊れたものを建て直す仕事に着く、というエピソードがいつか実現してくれることを祈りたいが、平和な国で休日に呑気に映画を見ている自分が言うのも何だか居心地が良くないのだけれど。
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