持て余す

アスの持て余すのネタバレレビュー・内容・結末

アス(2019年製作の映画)
3.7

このレビューはネタバレを含みます

不思議な味わいホラー。

同じ監督の『ゲットアウト』がとてもとても良くできていて、ホラーというかサスペンスというか、あまりないタイプの物語だった。ホラー寄りのサスペンスって、整合性が蔑ろにされがちだけど、現実的ではないものの作中での破綻もなく綺麗に閉じていてとても好印象だった。

からの『us』なのだけど、予告で見る限りでは一筋縄ではいかないホラーのようで、期待値は高かった。

結論から言えば、ダメじゃないけど、『ゲットアウト』ほど感心しなかった。もちろん、これは個人の感想なので『us』の方が優れた作品だという人も大勢いるのだろうし、そういう人の感想も読んでみたい。

『ゲットアウト』の物語の核心は非現実ではあるけど、もしそれが可能だとすればああしたことがあってもおかしくはないし、黒人差別の話をエッセンスとして利用する手練れのツイストがあったし、結末まで理解できた。

ところが、『us』においては結末に至っても結局のところドッペルゲンガー──クローンがなぜ襲ってくるのかがいまいち伝わってこない。考察サイトを覗くと虐げられた人間たちの叛乱であるとか、ハンズ・クロス・アメリカ(なんかの社会運動だとか)が、モチーフになっているとか。

そうしたことを知っていたにしても、知らなかったにしても、クローンがオリジナルを乗っ取るべく襲ってくる理由としてはやや弱い。色々あるような雰囲気で作られていたし、政府によって隠蔽された存在であるにしても、何段階かすっ飛ばして殺して入れ替わるというのはいささか乱暴過ぎるように感じる。

オリジナルと協力していく方が生きる上で効率的ではないかと思うのは、平和ボケした発想なのだろうか?

だから、結末に近づくほど距離を感じてしまった。黙って襲いかかってくるあの夜のシーンはマジで怖いし、無闇に強過ぎないところなんかも(まあ、クローンだからオリジナルと互角なのは当たり前ではあるけど)感心してたので、少し残念だった。

アデレードに関する大ネタも、失語症とかフラッシュバックのような幼い頃の記憶とかで丁寧に描いていたけれど、もっと露骨な伏線を張ったって良かったように思う。真相に届く人は増えるだろうけど、この映画の主眼はそこじゃなくて、無口なクローンたちから襲われる恐怖だろうし、知っていてもなお怖さは損なわれないと思う。

ウサギはかわいいね。
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