Eyesworth

アスのEyesworthのレビュー・感想・評価

アス(2019年製作の映画)
4.7
【反旗を翻した"わたしたち"】

『ゲットアウト』『NOPE』のジョーダン・ピール監督の社会派ホラー映画。

〈あらすじ〉
アデレード(ルピタ・ニョンゴ) は夫のゲイブ、娘のゾーラ、息子のジェイソンとともに一家で夏休みを過ごすため、幼少期に住んでいたカリフォルニア州サンタクルーズの家を訪れる。アデレードは過去にこの地で不気味な出来事に見舞われたことでトラウマがフラッシュバックするようになってしまっていた。そして、家族の身に何か恐ろしいことが起こるという妄想を次第に強めていく彼女の前に、自分たちとそっくりな“わたしたち”が現れた…。

〈所感〉
『ゲットアウト』『NOPE』もストーリー以上に込められたメッセージ性が強い作品だったが、この作品もただのドッペルゲンガー系ホラーではなくて、非常に考えさせられる題材であった。自分たちとそっくりなアスの正体はネタバレになるので言わないが、オチで見事に過去の伏線が回収されており、すべてを察したアデレードとお面を被るジェイソンのやり取りがなるほど!と膝を打ってしまう。ホラー映画でここまで気持ち悪い、それでいて気持ち良いような体験は初めてだった。その後も考察記事を読んだりして掘り下げていくと自分の読みが甘かったことに気づく。2時間映画に向き合っていても見逃している要素が多々あった。流石はジョーダン・ピール監督、仕掛けているトリックの数と質が異常である。彼らは私たちであり、私たちは彼らである。それは何らかの形で反転し得る可能性を孕んでいる。クレジットが入るケージのウサギの長回しのシーンとエンディングで流れるMinnie Riperton(ミニー・リパートン)の『les fleurs』をバックに移される赤い服の人々にゾッとさせられる。かつてない程の高揚感がアメリカ全土を覆っていた。
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