CHEBUNBUN

アスのCHEBUNBUNのレビュー・感想・評価

アス(2019年製作の映画)
4.0
【俺たちに"US"はない】
『ゲット・アウト』で古典的王道ホラーに魅せかけて、黒人の歴史を巧みに皮肉ってみせまジョーダン・ピール最新作。

本作は、ある裕福な家に、家族とソックリな風貌を持つ集団が侵入するという内容。ジョゼフ・ロージーの『召使』から描かれてきた侵入者乗っ取りもの。最近でも『ボーグマン』や『歓待』などといった作品が作られているほど、愛されたテーマだ。

そして、『アス』は『トワイライトゾーン』にあった乗っ取りものをベースに映画化されたのですが、『ゲット・アウト』以上に手数の多さと再構築の妙に唸らされました。

なんといっても面白いのが"US(=私たち)"の造形。我々と同一でありながらも、一目見ただけで身の危険を感じるほどの眼差し。滑稽なはずなのに笑えなくなるほど怖い気持ち悪い動き方に背筋が凍ります。ジョーダン・ピールは元々コメディアンであることを活かして、笑いと恐れの狭間をチクチクと刺す恐怖に包まれています。

そして、王道なホラーのはずなのに、社会問題へのメッセージが隠されているはずなのに中々掘っても掘っても核心に迫れないもどかしさがさらに得体の知れない恐怖となって我々に襲いかかります。

そして、終盤に行くに従い、「俺たちに明日はない」「俺たちに"US"はない」という絶望が包み込み戦慄しました。ジョーダン・ピール監督まだまだギラギラしてました。
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