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アスのpriskyのレビュー・感想・評価

アス(2019年製作の映画)
3.6
自分たちのドッペルゲンガーに襲われるという設定は十分に興味をそそるし、俳優たちの演技は見事だった。しかし、なんだか、イマイチ感が残ったのも正直なところだ。

普通のファミリーが、たとえ不気味な連中に襲われたからといって、逃げるのではなく武器を手に戦おう(相手を殺そう)とすることに、まず違和感を覚えたし、せっかくドッペルゲンガーが怖いという設定の作品に双子が出てきているのに、双子だからこそのホラー的演出がほぼ皆無だったことも残念だった。

なにより、貧しいひとびとを救う目的で開催されたハンズ・クロス・アメリカというイベントがうまくいかなかったことや、さらには、そのイベントのあと、皮肉なことにホームレスが増え、貧困層が広がってしまったという事実を知っているひとがどれだけいただろうかと、頭を傾げてしまった。

一歩まちがったら、自分は、いわゆる“恵まれない”ひとだったかもしれない。そこに、この映画の真の恐怖があるはずなのに、観客に伝わっているのか、疑問だ。

ドッペルゲンガーたちを、およそ知性のないモンスターのような存在として登場させ、バケモノ退治に終始してしまったことで、アメリカが抱えるリアルな問題に、この作品のメッセージが重ならなかったように思う。
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