あんず

家族ゲームのあんずのレビュー・感想・評価

家族ゲーム(1983年製作の映画)
3.9
横並びの食事シーンといえば、名画『最後の晩餐』を思い出すけれど、今作を観てしまったら、こちらを思い出すことになるかもしれない。

その家庭を最も象徴的に表すシチュエーションは、食卓のような気がする。どんな座席でどんな物をどんな風に食べるのか、どんな会話をするのか。例えば、昔のお金持ちは長~いテーブルで家長が先端に座り、家長が会話を仕切るとか。この家では、ぎっちぎちの横並びで相手の顔を見ずに食べる。特に父親が好き勝手言い、家族を従わせようとするのだが、誰も本気で聞いちゃいない。目の前の食事を食べることに夢中。テーブルに載り切らない物はカートに載せ、それを各々移動させて自分で取るのも面白かった。

ここに摩訶不思議な家庭教師が加わる。植物辞典を小脇に抱え、船に乗ってやって来る時点で十分、怪しい。私ならこの人には頼まない。松田優作のことはよく知らないけれど、この得たいの知れない役にピッタリだと思った。

最初から最後まで、不思議でシュールでカオス。本来なら小声で聞こえるはずの声が無音になったり、逆に生活音がすごく目立ったり。全てに意味があるのかなぁ。好きなシーンは、「夕暮れ」をひたすら書く所と、母親が近所の人の相談に乗っている所に息子が帰って来てのハチャメチャ、最後の食事のシーン。この食事シーンは、最高に面白かった。ラストシーンの解釈はよく分からなくて、ググってみた。いくつか答えがあって参考にはなったけど、監督の真意はどうだったのか気になる。
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