Kana

宮本から君へのKanaのレビュー・感想・評価

宮本から君へ(2019年製作の映画)
3.0
世の中にはたぶん男を狂わせる女というのがいて、そういう女は大概にして男に振り回されるのが好きな女だったりする。
そんな危ない部類の男女の間に、うっかり足を踏み入れてしまった平凡な青年が、心の奥底に秘められていた強烈な自我を爆発させる様を描くラブストーリー。

時系列がバラバラなので見ているとパズルのピースを埋めていくような感覚になって、まるで宮本の走馬灯のように思えてくる。
人間の記憶って順番通りきちっと思い出すわけじゃないからそんなもんなのかなぁと。
ここまで強烈な愛を描くのに2人の出会いや細かいところはまるっと省略し、とにかく喜怒哀楽のピークだけを駆け抜けるような筋立てで。
前半だけでも駆け足だなぁと思うのに、後半からは全力ダッシュで観客を置いてきぼりにする。
そしてこの、始まりから終わりまでで宮本への評価と彼女への評価が完全に反転してしまうカラクリがすごい。

R15になってるけどこれはR25くらいにした方がいいんじゃないかな。
教育上よろしくないもの、子供には絶対に見せられないもの全部載せのオンパレードでした。
若い頃にこんなの見てしまったら下手したら病んでしまうんじゃないかと心配になるレベル。
ただ、宮本はバカかもしれないけど、もっとバカなのはやすこだと思う。
もちろんあいつは真性のクズだけど。
ピエール瀧が腐ってなかったのがせめてもの救いで、佐藤二朗のめちゃくちゃムカつく感じも絶妙だし、キャストがほんとに適役。
何より主演2人の迫真の演技がすごすぎる。
古臭い音楽と手作り感のある画が余計に演技力だけで突き抜けた感情を表現しようとする役者魂を際立たせていました。

面白いか面白くないかって言ったら完全に胸糞悪いお話なんですが、映画としては傑作。
特にあの、本気や全力なんて甘っちょろい言葉と、命がけの違いを体現したシーンがすごい。
そして全体的にはめちゃめちゃシリアスなのに吹き出しそうになる瞬間が何回かあって、あの間を作るのも監督や脚本はもちろん役者さんの実力なんだろうなぁと、恐れ入りました。

全然違うけど自我の暴走という意味ではスリービルボードを思い出しましたが、あちらの方が見ている間の胸糞悪さは強いけど見終わった後に考えさせられるものがある。
しかしこっちは見終わってから得るものは特にない…ので映画好きの人は見たらいいと思うけど、基本人には勧められないなと思いました。
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